石破政権の行方を左右しそうなのが、「年収103万円の壁」の問題です。
JNNの世論調査では年収の壁を引き上げることに66%の人が賛成と答えましたが、課題も見えています。
国民民主党「103万円の壁を崩したい」
国民民主党 玉木雄一郎 代表「『103万円の壁』これを崩したいんです。税金の支払いを気にすることなく、もっと稼げますから、もっと働けますから」
衆議院選挙で躍進した国民民主党。
玉木代表は所得税が非課税になる対象を、103万円から178万円に引き上げるよう求めています。
自公で過半数を割った与党側は政権運営の協力を得るために、これを受け入れる方向で調整を進めています。
”年収の壁引き上げ”街の声はー
大学生「壁は賛否両論ですけど、私からすればいらない。働きたい人は思う存分働いてほしい」
大学生「年末になったら働けるのに、働けないという事態になったことが実際あるので、働きたいなと思います」
人手不足の一因にも
年収が103万円を超えると所得税が発生します。
そのため、パート従業員などが手取りの減少を避けて働く時間を調整するため、人手不足の一因となっています。
カフェの店長「年収の壁があるから年末とか入れなくなって、一番入ってほしいときに。引き上げてもらった方がいい」
引き上げに「賛成」66%
週末に行ったJNNの世論調査でも、「年収の壁」を引き上げることに「賛成」と答えた人は66%、「反対」は20%でした。
この「103万円の壁」が引き上げられた場合、恩恵を受けるのは、パート従業員やアルバイトだけではありません。
恩恵は給与所得者にも どれくらいの減税に?
給与所得者も基礎控除と給与所得控除が増えるため納める税金が減ることになります。
国民民主党の試算では、年収200万円の人で8.6万円、年収500万円の人で13万2000円の減税効果があり、手取りが増えるとしています。
課題は財源確保
一方、政府は7兆6000億円ほど税収が減ると試算していて、財源確保が課題との認識を示しています。
ファイナンシャルプランナー 中村賢司さん「経済のことを考えるとすごくいいことだと思います。減税効果が7兆円~8兆円あるわけですから、その分消費にまわることによって、また経済効果は期待できる」
専門家は103万円の壁の引き上げによる経済効果に期待する一方で、壁はほかにもあると指摘します。
更に「106万円の壁」「130万円の壁」も
ファイナンシャルプランナー 中村賢司さん「働き控えは、実は103万円の壁よりも、106万円の壁とか、130万円の壁、いわゆる社会保険料を負担するかしないかというとこの壁、ここを意識している方が多いと思う。世帯主の扶養から外れてしまって、社会保険料、それと健康保険を自分で負担しないといけなくなるんですけど。106万円でだいたい月々1万2000円から1万3000円ぐらいの社会保険料の負担が発生しますから、その分、毎月の手取りが減ってしまうわけです。103万円の壁が178万まで引き上げられることは、すごくいいことだと思うんです。ただ、合わせて考えないといけないのは社会保険の壁ですね」
年収の壁
所得税は103万円からかかります。
国民民主党はこの「103万円の壁」を「178万円」に引き上げようと提案していて、「もっと働けるように、もっと稼げるようにしたい」と主張しています。
ただ、103万円以外にも社会保険料がかかる106万円の壁と130万円の壁、さらに、配偶者特別控除がなくなる38万円の壁も存在します。
年収と手取り 具体的には・・・
ファイナンシャルプランナーの中村賢司さんが試算したケースです。
年収103万円では住民税だけ引かれて、手取りは102万2500円。
これが、年収106万円になると、社会保険料を年間で15万8083円支払わなければならず、手取りは89万6917円になります。
そもそも、なぜ国民民主党は178万円という数字を示したのでしょうか?
「178万円」の根拠は最低賃金の上げ幅
「103万円の壁」ができたのは1995年。
当時の日本の最低賃金は全国平均で611円。
そこからおよそ30年経ち、現在の最低賃金は1.73倍の1055円となっていますが、「壁」は103万円のまま。
なので、国民民主党は103万円の1.73倍となる178万円への引き上げを主張しているのです。
11月11日には特別国会が召集される見込みで、総理指名選挙が行われる予定です。
それ以降も、臨時国会で補正予算の審議、2025年1月には通常国会で25年度予算が審議される予定で、法案を通すためにも、与党としては国民民主党の協力が必要不可欠になっています。
年収103万円の壁の引き上げが実現するのかどうかが注目されています。