ユネスコの無形文化遺産に日本の「伝統的酒造り」が登録される見通しとなりました。
福岡県糸島市の酒造メーカーも、「国の内外での需要が高まる」と期待しています。
日本古来の技術
「伝統的酒造り」はカビの一種である麹菌を用いて、コメなどの原料を発酵させる日本古来の技術です。
日本酒や焼酎、泡盛など、杜氏や蔵人らの経験によって築き上げてきた技術は、日本各地の気候や風土にあわせ、受け継がれています。
ユネスコの評価機関は5日、この「伝統的酒造り」を無形文化遺産へ登録するよう勧告しました。
1855年創業の酒蔵
福岡県糸島市の白糸酒造です。
1855年に創業した酒蔵で、酒造りのために品種改良された酒米・山田錦を使用し、田中六五や白糸などの商品を製造しています。
白糸酒造 田中信彦 社長
「このごろはDXというか非常に近代化しているところもありますけど、特にうちの場合は『ハネ木しぼり』という伝統的な昔ながらの作り方を続けながら、やさしい味の酒を造り出しているのが特徴でございます」
無形文化遺産に登録されれば、日本酒の需要が増加すると期待しています。
白糸酒造 田中信彦 社長
「日本食もユネスコに登録されていますけど、それと付随して日本酒も海外の方に認めて頂けるというのは非常にありがたいことでもあるし、今の若い人たちが日本酒に対する興味を持って頂ければ、また日本酒の需要も広がっていくんじゃないかなという風に期待しています」
世界の「無形文化遺産」
ユネスコの無形文化遺産には世界では、フィンランドの「サウナ」、スペインの「フラメンコ」、フランスの「フランス料理」、中国の伝統医学「鍼灸」などがあります。
これまでに登録された日本の無形文化遺産は、2008年の「能楽」「浄瑠璃」「歌舞伎」、2013年の「和食」2016年の「山・鉾・屋台行事」などがあります。
今年、「伝統的酒造り」が登録されれば23件目となります。
「日本文化の根底を支える技術」
国がユネスコに提案した「伝統的酒造り」の概要では、「酒は儀式や祭礼行事など幅広い日本文化の中で不可欠な役割を果たしており、その根底を支える技術と言える」
また、「酒を造るプロセスは杜氏・蔵人たちのみならず、広く地域社会や関連する産業に携わる人々に支えられている」「酒造りを通じた多層的なコミュニティ内の絆がある」としています。
製造業者は半減
国内の清酒製造業者数は、2000年は1977人でしたが2022年は1036人となり、20年ほどで半分に減少しています。
ユネスコの無形文化遺産のそもそもの目的は「存続の危機にあるものの保護」です。
「伝統的酒造り」は12月上旬にパラグアイで開かれるユネスコ政府間委員会で正式登録される見通しです。