安定した価格から「物価の優等生」と言われてきたもやしですが今、生産者の廃業が相次いでいます。
影響は学校給食にも広がっています。
90年以上もやしを生産する食品メーカー
佐賀県吉野ヶ里町にある食品メーカー「川崎食品」。
創業以来90年以上にわたって、もやしの生産・販売を手がけてきました。
川崎食品 川崎紀明 社長「自動的にラインで流れていきながら洗浄をして根っこをカットして、また再度洗浄をして、水を切ってというところまでが一連の流れで進んでいきます」
2つの工場を構え、1日におよそ25トンものもやしを九州全域と山口県に出荷しています。
長年「もやし一筋」で生産を続けてきましたがこの数年は、厳しい経営が続いています。
川崎食品 川崎紀明 社長「電気代もすごいかかってますね。今機械も更新したりとかしながら、電気の使用量を下げるように努力はしているんですけども、そもそも電気代が上がってしまっているので、電気の使用量が下がっているのに、電気代が上がってるっていう、なかなかそこの吸収が追いつかない状況にはありますね。大変です」
電気代に人件費の高騰、それだけではありません。
「緑豆」仕入れ価格 4倍以上に
川崎食品 川崎紀明 社長「これが緑豆ですね」
記者「触って大丈夫ですか?結構ちっちゃいんですね」
川崎食品 川崎紀明 社長「大体3.5~6ミリぐらいですかね。この一粒一粒が1本になるっていうような形ですね」
もやしの原料となる「緑豆」、その仕入れ価格も上がっています。
川崎食品 川崎紀明 社長「ここ10年ぐらい使用している感覚からいくと、2倍3倍ぐらいには上がってます」
緑豆のほとんどは中国から輸入しています。
もやし生産者組合によると中国で緑豆の作付面積が減っていることなどから、価格はこの20年で4倍以上に跳ね上がっているということです。
もやし業者の廃業相次ぐ
こうした逆風を受けてもやし業者の廃業も相次いでいます。2009年には全国に235社あったもやしの生産業者は、93社まで激減。福岡市でも10月、学校給食用にもやしを納入していた市内で唯一のメーカーが廃業し、給食から一時もやしが消える事態となりました。
しかし、「低価格」を売りにしてきたもやしだけに値上げも簡単ではありません。
「安いから買う」消費者の本音
Q 店長もやしなんですけど何種類あるんですか?
サニー姪浜店 恩知店長「この三つですね」
Q 売れ筋はどれになるんですか?
サニー姪浜店 恩知店長「やっぱり一番下の価格が一番安いこの商品ですね。やっぱり価格だと思いますね」
この店では3種類のもやしが並んでいますが、売れ筋はやはりグラム単価の一番安いもやし。
野菜売り場で買い物客の様子を見てみると・・・
じっくり吟味して、、、、カゴに入れます。
ブロッコリーも色や形、一番いいものを見極めます。
ゴボウを手に取り、、、やっぱりこっち。
一方、もやしは・・・ほとんど迷うことなくカゴに入れていきます。
Q もやし普段買われるときって何を気にしてらっしゃいます?
買い物客「やっぱお値段かな。本当はあの根切りがいいんですけど、ちょっと高いから。お安い方にいきます」
買い物客「これが普段買ってるやつずっとこれ」
Q 3種類ありますけど
買い物客「やっぱりこの辺高いから序盤にもう見てないんですよね前から多分目に入ってなくて」
Q もやし選ぶときお値段以外何か気にします?
買い物客「賞味期限くらいです。もやしはもやしだから」
やはり消費者がもやしを選ぶうえで重視するのは何をおいても「安さ」。
しかしこの「安さ」を守るには今の緑豆価格は高すぎるといいます。
ウズベキスタンの畑を視察
川崎食品の川崎社長は中国産よりも安い緑豆を求め、10月、初めて産地を訪問。
もやし生産者組合の仲間とウズベキスタンの緑豆畑を視察しました。
川崎食品 川崎紀明 社長「まだまだ発展途上な感じではあるんですけども一応可能性はあるかなという印象を受けてます」
緑豆の産地の見直し。そして10年前からはもやし以外の商品も手がけることで利益を確保し、川崎社長は何とかもやしの生産を続けていく方法を模索しています。
川崎食品 川崎紀明 社長「やっぱりその適正な価格で売られてるもやしをどんどん買っていただくっていうことが我々生産者に対しての応援していただける励みにもなりますし、どんどん買っていただきたいところではありますね」
安くて調理がしやすくさまざまな料理に重宝されてきた「もやし」。
「物価の優等生」はかつてない苦境に立たされています。