体重1500グラム未満で生まれた赤ちゃんは腸の発達が未熟で、粉ミルクのような人工乳では腸炎を起こしてしまうおそれがあるため、母乳を与えることが重要なんだそうです。
ただ、早産のために母乳が出にくいといったケースも少なくないことから、母親に代わって母乳を提供する母乳バンクという仕組みが広がりつつあります。
「母乳バンク」から病院に
久留米大学病院総合周産期母子医療センター 木下正啓医師「こんな感じでバンクから届きます。うちらがオーダーしたらここに届くようにして」
医師が手にしているのは「母乳バンク」という仕組みで、病院に届けられた母乳です。
この母乳は、自分の子供に与える以上にたくさんの母乳が出る母親から提供されました。
検査や安全管理を徹底
提供された母乳は「ドナーミルク」と呼ばれ、専門の施設で低温殺菌処理され細菌検査をしたうえで、菌が一切検出されない状態で冷凍保管されます。
ドナーミルクが必要なのは体重1500グラム未満で生まれる極低出生体重児や早産の新生児。
腸の発達が未熟なため、粉ミルクのように牛乳をもとに作られた人工乳を与えると壊死性腸炎になり、命の危険にさらされるリスクがあります。
ドナーミルクのメリットとは
ドナーミルクは腸炎を防ぐとともに腸の発達を促す効果もあるということです。
久留米大学病院総合周産期母子医療センター 木下正啓医師「壊死性腸炎は早産児に多く見られる疾患で、腸の血液の循環が悪くなって腸が壊死を起こすような疾患。ドナーミルクを提供することで壊死性腸炎になるリスクの高い赤ちゃんが早く栄養を確立する、早く腸管を使えるというメリットが一番かなと思っております」
ドナーミルク利用の母親の思いは
母乳バンクを運営する団体には、利用した母親から感謝や安心の声が届いているということです。
日本財団母乳バンク 田中麻里常務理事「初めはご自身が母乳を赤ちゃんにあげられないことによって、赤ちゃんに申し訳ないというふうにご自身を責められたりというような気持ちだったりするんですけども、ドナーミルクを飲んで成長されているご自身の赤ちゃんを見ていくことで安心すると共に、赤ちゃんと自分を救ってくれた全国のお母さんに感謝しているということですね」
「ドナーミルクが当たり前の社会に」
久留米大学病院は先月、福岡県で初めて、ドナーミルクを使用できる施設に登録されました。
一方で、母乳を提供するためのドナー登録ができる施設は20都道府県にしかなく、福岡県にはまだありません。
日本財団母乳バンク 田中麻里常務理事「献血と同じくらい、ドナーミルクが当たり前の社会になっていけばいいなと考えていて、それに向かって、尽力していきたいなと考えています」ドナーミルクを必要とする新生児は年間5000人とも言われます。
ドナー登録ができる施設、ドナーミルクを使用できる施設、いずれもまだまだ必要で母乳バンクのさらなる普及が待たれます。