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糖尿病治療の新たな形と全国が注目する「小郡式糖尿病治療」 地域連携のカギを握るのは「コーディネートナース」

RKB毎日放送 2024年11月19日 15時32分

世界中で患者が増加している糖尿病。2021年には5億人を超えたと推計されています。日本国内でも2016年に糖尿病が強く疑われる人の数が1000万人を超えたとみられています。

そんな中、糖尿病が進むと必要になる透析患者の数が福岡県の平均より飛び抜けて少ない小郡市。全国から注目を集める糖尿病治療の小郡方式について取材しました。

病院と病院病院と患者をつなぐ「コーディネートナース」

糖尿病治療の「小郡方式」を実践しているのは、糖尿病の専門医がいる小郡市の嶋田病院。

カギを握るのは、「コーディネートナース」と呼ばれる坂本則子さんと同僚の西岡恵子さんです。

2人は、専門医がいる嶋田病院と地域の診療所との間を行き来し、共通で治療している糖尿病患者の検査データや診療内容を記入した「パスシート」を直接受け渡して経過を報告。

それぞれの医師や看護師が正確に患者の状態を把握するために活躍しています。

やなぎ医院 栁純二理事長「全国的にもこのようなシステムはあまりない。いい結果が出ているので、すばらしいと思う」

「小郡方式」の効果か、糖尿病が進むと必要になる透析患者の数をみると、福岡県の平均が1000人中7.71人に対して、小郡市は4.24人と飛びぬけて少なくなっています。

病院だけではないコーディネートナースの働き

西岡恵子看護師「秋の塩分注意報ということで、肌寒くなってくるとどうしても食べたくなるおでんの塩分は、だいたい5品で3.5~5グラムで…」

2人は、定期的に薬局を訪れ、塩分のとり過ぎに注意を促すものなど、手作りのリーフレットを配っています。

普段の生活習慣が大きな原因であると言われる糖尿病は、食事のとり方などにも注意が必要となります。

病院だけでなく、身近な調剤薬局などにも食事指導への理解を深めてもらおうと、活動しているのです。

そうごう薬局大刀洗店 山本隼也薬局長「ほかの医療従事者もみんな同じ指導ができるというところがこの地域の連携の魅力というか、みんな同じクオリティで指導ができるという所が、こういう資材があって助かっている」

西岡恵子看護師「地域全体、診療所・薬局・歯科・眼科。患者さんが行かれる所どこでも同じリーフレットで指導していただけるようにということで」

糖尿病連携「小郡方式」の考案者「選任の看護師が必要」

この仕組みを考案したのは、嶋田病院糖尿病内科の赤司朋之医師です。

赤司医師が嶋田病院に着任した2005年には、この地域に糖尿病専門医は一人もいない状態。

その時に病院の院長から「小郡の糖尿病の人は小郡の中で診られるようになってほしい」と言われ、病院と診療所の間をつなぐ「連携パス」という仕組みが重要だという考えに至りました。

「連携パス」をうまく機能せるために、専任の看護士を起用することを決めます。

嶋田病院糖尿病内科 赤司朋之医師「2人は私が昔勤めていた病院の看護師。特に糖尿病に関してはしっかり勉強していて、当時、出産・子育てで働いていないということを聞いたのでチャンスと思って彼女たち2人に声をかけた」

苦労乗り越え広がる連携の輪

土地勘がない場所での活動に苦労したものの、持ち前の明るさと患者に対する熱い思いで少しずつ連携する病院や施設の輪を広げていった2人。

現在は約50の医療機関と連携、ポイントとなる再診率は9割を越えるほど地域に浸透しています。

長く通院を続ける患者からも「連携してもらっているから安心」と好評です。

治療面だけではない地域の医師にも及ぶ連携のメリット

「小郡方式」は、患者の治療面だけでなく、開業医としてあらゆる疾患を診る必要がある地域の診療所の医師にもメリットがあるといいます。

やなぎ医院 栁純二理事長「うちは田舎の開業医でもうあらゆる疾患を診ている。患者の中には重症の人もいる中で、糖尿病の専門医でない医師が、本当に最適な治療を選択できるかというと難しい面もある。そういう時に定期的に訪問していただき、いろんな指導をしていただくことは非常に役に立っている」

嶋田病院糖尿病内科 赤司朋之医師「小郡式と言われるダブルドクター制・ふたり主治医制を使うと知識としてもグッと得られることはある。それ以外に悩みが生じた時に、彼女たちの顔を思い浮かべていただいて、すぐに質問していただければいい。フェイストゥフェイスの関係は、そういう所にメリットがあると思っている。それが十分できたことでより連携パスの内容も医療関係者の知識の底上げとかも進んでいったのだろうと」

西岡恵子看護師「私たち自身が地域の先生方と一緒にワクワクしたいというのもあるので、すごく楽しく仕事させてもらっている」

コーディネートナースがつなぐ連携は、これからの地域医療に欠かせないものとなるのか。赤司医師が立ち上げたこの連携を推進した島田会長の思いは?

嶋田病院 島田昇二郎会長「地域医療のそれぞれの現場で、必ず意識の高い人たちがいて、その人たちのおかげで僕は地域医療が成り立っているのだろうと思う。そういう「いい流れ」をこれからも作っていくことが大事なことじゃないかと思う」

コーディネート役の看護師は佐賀にも波及

糖尿病専門医が少ないということもあり、佐賀県でも2012年から県で認定された糖尿病コーディネート看護師が地域の医師との連携をはかっています。

佐賀県医療センター好生館で糖尿病コーディネート看護師として働く江頭望さんは、「高齢の一人暮らしや夫婦の二人暮らしと、サポートがない患者も多いので、少しでも医療者が介入できたら」と話します。

好生館は病床数400を越える大きな病院だけに、院内で外来と病棟との連携もとりながら、退院した患者が通院している地域のかかりつけ医との連携を密にしています。

糖尿病コーディネート看護師 江頭望さん「入院中の患者さんが家に帰ってからを診ることはとても少なかったので、退院してからどうしているのか、直接診られるのはとてもうれしい。患者さんも『診に来てくれた』、私たちも『伝わっていてよかった』と、お互いのモチベーションにつながっていると思う」

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