気象庁の予報通り、12月は急に冷え込みました。各地から初雪の便りも届いていますが、実は今年2月から、初雪の観測を人ではなく器械が行っています。
同時に、ひょうや黄砂、虹の観測がなくなりました。
一体、何が起きているのでしょうか。
経費と人員の削減で・・・
初雪の観測を行っているのは、もちろん気象庁や、その地方の気象台の職員でした。今までは。
ところが今は、すべての気象台で「感雨器」と呼ばれる器械に基づいた判断に変わっています。変更されたのは今年の2月のことです。
経費削減や人員削減などの理由で、気象台の職員が行ってきた様々な目視観測を、大幅になくしてしまったのです。
その一つが初雪の観測。東京と大阪のみ目視観測の方法の伝承を目的に、人による観測を補助的に続けていますが、初雪の観測を行っているのは、人ではなく器械なのです。
器械がどうやって初雪を観測するの?
器械で初雪の観測などできるのでしょうか。
確かに雪自体を見て判断することは不可能ですが、「雨雪判別表」と呼ばれる図を使って判断しています。
降水があった、つまり「感雨器」に何かが降ってきた時の気温と湿度がわかれば、それが、「雪」か「みぞれ」(雨と雪が混じったもの)か「雨」か分かるというもの。
この雨雪判別表に当てはめて、今シーズン初めて、雪かみぞれとなれば、「初雪」の発表となります。
器械の観測により、初雪の発表が早めに
初雪の観測を器械がやってくれるなら、人が四六時中、外を気にして観測を続ける必要が無くなり楽になりそうですが、問題もあります。
「感雨器」はこれまでにも各気象台に設置されていて、人の目による観測と並行してデータをとり続けてきました。
その結果、目視と”大きな差”はないと判断し、今年2月に導入に至った経緯があります。
しかし、差が全くないわけではありません。
「感雨計」による、福岡の初雪の平年値(1991年から2020年の30年の平均)は、12月16日でした。
一方、目視による初雪の平年値は12月18日です。
初雪の観測判断、器械によるほうが2日早くなっているのです。
たった2日ですから問題ないように見えますが、もしかしたら将来、人は全く雪を感じなかったのに、「器械」が「初雪」といきなり発表なんて事が起こるかもしれません。
多くが廃止された目視観測
そして、気象予報士など、私たち気象関係者が最も危惧しているのは、1891年から130年以上続いてきた初雪や、霧、雷などの目視観測が器械観測に変わり、これまでのデーターの価値が下がってしまうのではないかということ。
実は、今年2月から器械での観測が不可能という理由で、雲量(全天に占める雲の量)や、ひょう、黄砂、虹などの観測が終了してしまいました。
地球温暖化で四季がおかしくなっている今だからこそ、残して欲しい観測が他にも多くあります。
13日(金)夜から15日(日)にかけて、九州から北陸地方で、大雪・落雷・突風・ひょうのおそれ
今夜13日夜から、上空に強い寒気が流れ込むことに加え、14日(土)~15日(日)には西高東低の冬型の気圧配置となり、今夜13日(金)夜から15日(日)にかけて、九州から北陸地方で、大雪・落雷・突風・ひょうのおそれがあります。
器械での観測にはなりますが、福岡をはじめ各地で初雪の発表が行われるかもしれません。
また、仮にひょうが降ったとしても、すでに気象台での観測はしていませんので、もちろん発表もありません。悪しからず。
RKB気象予報士 龍山康朗