ラグビーだけ楕円球という特殊形状
年末年始恒例の全国高校ラグビー大会開幕が近づいている。
この時期、サッカーやバスケットボール、バレーボールといった球技種目はいずれも高校の全国大会が行われるが、花園で行われるラグビーは、高校総体=インターハイとして行われること、また大会名に「選手権」が付かないことが、それら他の競技と大きく異なる点だ。
そしてもう一つ、これはもう周知の事実だが、ラグビーだけはボールが球状ではなく楕円であること。
ボールが弾んだ時、どちらに向かうかが分からないところが「まるで人生のようだ」と捉える人もいるようだ。
ラグビーボールの規定
そのラグビーのボールだが、当然大きさには規定がある。
ルールブックによると、
楕円の長径280~300ミリ
周囲の長さ(短)580~620ミリ
周囲の長さ(長)740~770ミリ
重さ410~460グラム
いずれも、多少の幅を持たせてある。
それに、ボールは様々なメーカーによって作られているため、全てのボールがピッタリ同じ寸法、ということにはならないことくらいは何となく想像できる。
2大会ぶりの優勝狙う東福岡
これまで花園を7度制し、今回が35回目の出場となる東福岡高校ラグビー部のグラウンドを訪ねた。
グラウンドの片隅に用意してある練習用のボールは、何人もの選手の手足で操られた勲章とでも言おうか、表面はどれも擦れていて、メーカーロゴや記号の印字がずいぶんと薄くなっているものばかりだ。
使用ボールは3つのメーカー
そんなボールを観察してみると、メーカーロゴが3種類確認できた。
その3種類のボールを並べてよーく見てみると…ほんの僅かとはいえ、違いがあることに気付く。
左のA社のボールは、全体的に丸みがあってふっくらしている。
右のC社のものは、それをほんの少しスリムにした感じ。
真ん中のB社のボールは、少し先が尖っているように見える。
ボールによって感触が違う?
では、なぜ彼らは3種類のボールで練習しているのか?
それは…全国大会=花園で使用されるボールのメーカーがその3種類だからだ。
プレー中、メーカーによって違いを感じるのか選手に聞いてみると、ズバリ違いはあるそうで、それは手でパスする時ではなく、蹴った時なんだとか。
東福岡で現在キッカーを務める1年生スタンドオフ・橋場璃音選手に違いを聞いてみた。
東福岡高校ラグビー部1年生 橋場璃音選手「キックで、自分が思ったほどボールに回転がかからなかったり、意図した方向に飛ばなかったり、飛距離が出なかったりすることがある。どのボールでも対応できるように練習している。」
練習でも3メーカーを使い分け
選手たちは練習で3種類全てを使っているため、どれで試合をしても違和感はないと思われ、まさにこれこそが日頃の準備ということになる。
そういえば、随分前の話だが、二十年ほど前、当時の東福岡の選手に翌日の試合で使用するボールのメーカーを尋ねられたことがある。
その選手は、トライのあとのコンバージョンゴールやペナルティーゴールを狙うプレースキッカーだった。
ラグビーの繊細な一面
遠目で見ている分には同じに見える楕円球だが、メーカーにより実は感触に微妙な違いがあるのは確かなようだ。
密集での激しいプレー、ブレイクダウン、そしてタックルなど、パワーの側面が目立つ競技・ラグビーにおいて、このボールによるキックした時の感触の違いとは、実に繊細な一面を見た気がする。