障害者も楽しむことができる演劇、「バリアフリー演劇」がこのほど福岡市で公演されました。
バリアフリー演劇に取り組んでいるのは東京の劇団ですが、この劇団を支えているのは福岡市の女性です。
「バリアフリー演劇」とは
「フランスのために立ち上がりましょう!」
百年戦争の際フランスのために戦ったジャンヌダルク描いた「ジャンヌダルク ジャンヌと炎」。
演じているのは「東京演劇集団 風」です。
一見普通の演劇ですが、よく見ると、舞台の上で手話通訳をする女性がいます。
そして、セットの後ろにはセリフの字幕。
実はこの演劇、障害がある人も楽しむことができるバリアフリー演劇なのです。
東京演劇集団 風 代表・俳優 柳瀬太一さん「盲の方、ろうの方のために情報保障というところから始まったが、実際にやっていく中で、障害もあらゆるものがあるわけで、様々な障害のある人もない人も一緒に楽しめる演劇、そういう場を作れないだろうかと」
障害者に寄り添う様々な工夫が
東京演劇集団 風は全国の高校や特別支援学校などを巡って、バリアフリー演劇を年間200回以上公演しています。
観客「これ何?鼻?耳かな?」「耳よ。これが口」
公演の前には障害がある観客に舞台に上がってもらい、セットや衣装に触れて役者がどうやって演じているのかイメージできるように説明します。
公演が始まると、役者の動きを実況する音声ガイドで、視覚障害者も舞台を楽しむことができるように工夫されています。
聴覚障害者のためには、セリフが字幕で表示されるほか、ストーリーに合わせて舞台で踊ったり役者さながらの表情を見せたりしながら、セリフを手話で伝える「舞台手話役者」も登場します。
東京演劇集団 風 舞台手話役者 小島祐美さん「手話通訳のルールってちょっと下がっちゃうというのがあるんですけど、『社会の中で障害を持っている人たちが、私たちは健常の人達よりも一歩下がらなきゃいけないんだって思うじゃないか、だから下がっちゃいけないんだ』って演出家に言われたときに、演劇は本当の覚悟と熱い気持ちがあるからこそできるものなんだなと」
支援を続ける女性
このバリアフリー演劇を支援しているのは福岡市の権藤説子さんです。
3年前から劇団の基金に寄付しています。
税理士として働いてきた権藤さんは、4年前に初めて出会ったバリアフリー演劇に感動しバリアフリー演劇を広めるため、一線から身を引いた今も寄付を続けています。
きっかけはおい ”周囲との壁をなくしたい”
権藤さんのおいの深川勇成さん。
生まれた直後の酸素不足が原因で脳性まひになりました。
演劇や詩吟が好きだった権藤さんは、舞台芸術を通じて勇成さんと周囲の人との壁を無くせないかと考えたと言います。
権藤説子さん「社会福祉とか障害ということに対して理解する人が増えていくかと思ったら、芸術を一緒にすることがそれに近くなると思った」
母・世都子さんは周囲の目が気になって、以前は観客が集まるような場所に勇成さんを連れて行きにくかったということです。
勇成さんの母 深川世都子さん「音とかに敏感な子なので長い時間居ることができなかったんです。でもお姉さんがバリアフリー演劇を見に連れて行ってくれて、結構楽しめてきて、皆さんが拍手をするときは一緒に拍手をしたり」
RKB 金子壮太 記者「日曜日も見に行きますか?」
深川勇成さん「はい」
金子壮太 記者「楽しみですか?」深川勇成さん「はい」
公演は満席 観客「夢のよう」「また来たい」
勇成さんも楽しみにしていた福岡公演。
300席以上ある会場は満員になりました。
観客(聴覚障害)「手話劇が素晴らしくて、夢の中にいるみたいだった」
観客(聴覚障害)「手話通訳役者が一緒に動いて、役者とリンクしながら見られたのが面白かった」
観客(視覚障害)「視覚障害者ナレーションでどういう動きをしているかというのを感じられるし、また来てみたいと思います」
権藤説子さん「バリアフリーの進化がますます出てくること、彼らの芸術性が高まることはとても大事だと思います。十分にバリアフリー演劇の効果があると思った」
障害者も健常者も分け隔てなく理解し合う社会を実現するため、多くの人たちに一緒に芸術を楽しんでもらいたい。
権藤さんの思いとともに、バリアフリー演劇はこれからも全国各地で公演されます。