世界最高峰のエベレストなど、地球上に標高8000メートルを超える山は14座あります。この14座全てを日本人女性として初めて制覇したのが、福岡県大野城市出身の渡邊直子さん(43)です。
今年10月、2度目の挑戦で14座目の山、シシャパンマの登頂に成功した渡邊さん。
登山にかける思いや今後の目標などについて話しを聞きました。
日本人女性初の快挙
福岡県大野城市出身の登山家、渡邊直子さん、43歳。
看護師をしながら資金を貯め、2006年から世界最高峰のエベレストやK2など、標高8000メートルを超える山々に挑戦しています。
そして、2024年10月、日本人女性として初めて世界に14座ある8000メートル峰、全ての登頂に成功しました。
登山家 渡邊直子さん(43)
「14座目の山はシシャパンマという8027メートルの山で、朝日が出るちょうどタイミングのすごく良い景色の時に登頂したいというのがあったので、逆算して色々考えて登りました」
「シシャパンマ」はチベット語で「牛も羊も死に絶えて、麦も枯れる」という山です。
2023年10月に挑戦した時には雪崩に巻き込まれましたが、同行者に助けられ、九死に一生を得たといいます。
そして今回、2度目の挑戦でシシャパンマの登頂に成功。
8000メートル峰、14座制覇という偉業を成し遂げました。
さぞかし感動したことと思いきや・・・
”偉業達成”の感想は・・・
登山家 渡邊直子さん
「『ごく普通の8000メートル峰の一座の登頂だったな』という感じです」
RKB 池尻和佳子 アナウンサー
「『やったー!』とかないんですか?」
登山家 渡邊直子さん
「なくて・・・登山家の人とかは頂上に登ることを目的に行っていると思うんです。けど、私は生活を楽しみに、休みに行っているから」
怖いものはないのか、聞いてみると意外な答えが。
登山家 渡邊直子さん
「高所恐怖症です。下を見られないから上だけ見る。クレパスという氷の裂け目、はしご渡るときとか、めちゃ怖い」
幼いころから登山やキャンプ
3歳の頃から、登山やキャンプに参加していたという渡邊さん。
小学生の頃には、母親の勧めで中国にある無人島キャンプや雪山登山などを経験しました。
そこでの出会いや生活によって、引っ込み思案の性格から何事にもチャレンジできるように変わったと話します。
登山家 渡邊直子さん
「海外の人たちの生活を見たり、いろいろハプニングが起こったり、『楽しいな』と思って行っていたら8000メートル峰になったっていう」
登山の時に必ず持って行くものを見せていただきました。
登山家 渡邊直子さん
「これはピッケル。バランス取るための杖的な要素もあるし、難しい壁とかを登るときにこれで刺しながら登るときもたまにあるし。相棒です。」
RKB 池尻和佳子 アナウンサー「意外と軽いですね」
登山家 渡邊直子さん「軽いです。」
登山家 渡邊直子さん
「これは登山ブーツ。アイゼンというものをつけるので、歩きにくいんですけどね」
楽しみは現地の人との交流
途中撤退も含め、これまで8000メートル峰に30回登ってきた渡邊さん。
最大の楽しみは「シェルパ」と呼ばれる現地の案内人たちとの交流だと話します。
登山家 渡邊直子さん
「キッチンでご飯食べたりとか、くだらない話をしたりとか。現地の人たちと一緒に過ごすことで自分が癒やされて、素直な自分になれてリセットして。本当に生活の一部でなくてはならないものになっています」
14座を制覇し、取材や講演会など、多忙な日々を過ごす渡邊さん。
12月、福岡市で開かれた報告会には、渡邊さんの話を聞きたいと県の内外から多くの人が集まりました。
過酷な環境 衝撃の苦労話も会場からはこんな質問も。
参加者
「女性ならではの苦労は?」
登山家 渡邊直子さん
「生理とか。生理は『ピルとか飲んじゃうと血栓飛んじゃうから、高所では飲まないで』って先生に言われて垂れ流しですね。登頂直前なんですけど」
8000メートル峰の山頂の平均気温は氷点下35℃。
この過酷な環境の中で登山用の防寒スーツを脱ぎ着すると体力を奪われることから、生理やトイレは”自然に任せた状態”なのだそうです。
大分県からの参加者
「人生の後半を生きているけど、やっぱりまだまだ頑張ろうっていうファイトをもらえます」
兵庫県からの参加者
「シェルパとの関係性を重視しているのをめっちゃ感じました」
兵庫県からの参加者
「直子さんみたいに人生を楽しんでいきたいなと思います」
会場には、渡邊さんを支援したいと島根県から駆けつけたパン店も出店していました。
パン店の店主
「シシャパンマを模したパンです。同い年で今でも挑戦し続けていることに感動して、全額寄付しようと作ってみました」
Q 登山してみたいと思う?
パン店の娘「してみたい」
渡邊さんがこれからやりたいこととはー
夢は「多くの子供たちにヒマラヤに来てもらうこと」
RKB 池尻和佳子 アナウンサー「これからやりたいことはどんなことですか?」
登山家 渡邊直子さん
「14座終わっても、8000メートル峰は生活の一部なのでやり続ける。子供たちにヒマラヤにいっぱい来てもらって世界の面白さを知ってもらいたいというのもありますし、『伝える活動』と『体験してもらう活動』に力を入れて頑張っていきたい」
14座達成からつかの間、渡邊さんは12月19日、ヒマラヤ山脈のトレッキング企画で再びネパールに向けて出発しました。