福岡県北九州市の人口が、60年ぶりに転入者が転出者を上回る「転入超過」となりました。
背景には北九州市が力を入れている企業誘致や創業支援などの効果がありそうです。
「反転攻勢ののろしが上がった」
北九州市 武内和久市長「60年ぶりの人口転入超過となりまして、北九州市の反転攻勢ののろしが上がった」
北九州市は2024年、転入者の数が転出者を上回り、492人の「転入超過」となりました。
1965年以降、転出者が転入者を上回る「転出超過」が日本で一番長く続いてきた北九州市。
「転入超過」となったのは60年ぶりです。
特に、若者と子育て世代が多く移り住んだことが要因です。
IT企業を中心とした企業誘致
北九州市 武内和久市長「やはり大きいのは雇用だと思います。やはり企業誘致過去最高の投資額。それから企業誘致188社10年間かかったIT企業が、46社去年1年でやってきたことは、非常に大きなアクセルが踏まれたというふうに考えています」
市長が転入超過の要因にあげたのが、IT企業を中心とした企業誘致が進んだことによる雇用の創出。
Uターンした32歳の女性
特に増えているのが働き盛りの20代と30代です。
その一人、北九州市出身の山下舞さん(32)は東京からのUターンで、去年2月日本IBMの関連会社に就職しました。
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス 山下舞さん「東京で働いていた時と何ら変わりない規模とレベルの仕事をこの住み慣れた街でできているのがすごくいいなと思っています」
北九州市にオフィスを構えた理由
2022年から北九州市にオフィスを構えている日本IBM。去年12月、3か所目となるオフィスを小倉北区に設けました。
新たに入居したのは北九州市の再開発促進事業の第1号となる最新のオフィスビル。
容積率を緩和してビルの建て替えを促す北九州市の取り組みで、IT企業を中心にすでに8割が埋まっています。
日本IBMは人材交流など行政からの支援に魅力があるとして北九州市への進出を加速させています。
日本IBM 加藤洋副社長「多くの学校があって特にエンジニア理系の学生が多いということだったので、社会課題でありますIT人材の不足。こういったものを解決、一緒にできる街なんじゃないかという期待がありまして。今思うに間違っていなかったというふうに感じています」
スタートアップ企業の出現率は全国トップ
企業誘致だけではありません。
北九州市では、スタートアップ企業の出現率が全国トップを記録しています。
市のスタートアップ支援施設で、3年前にモノづくり企業に業務効率化サービスを提供する会社を創業した佐取直拓さん(34)。
ミラリンク 佐取直拓社長「私も起業するときに何したらいいのか全然分からなかったので、ここに相談したら、ここに常駐している(弁護士などの)士業の先生を紹介していただいて、無料で使えて、創業するところまでバックアップ・支援していただいた」
北九州市は最大2000万円の補助金やビジネスマッチングの推進などスタートアップ企業に対し手厚い支援を行っています。
「暮らしやすさ」も決め手に
佐取さんは、行政の支援に加え「暮らしやすさ」も決め手になったと話します。
自宅から子どもの保育園まで徒歩1分。小倉駅前の職場までは車で15分の距離です。
ミラリンク 佐取直拓社長「かなり家賃とかは安いので、東京のたぶん半額くらいで借りることができるんじゃないかなと思っています。私たちのオフィスも北九州市の運営しているところから借りているのでかなりお安くはなってるんですけど、大体5万円以下くらい」
住宅費やオフィスの賃料などの固定費が抑えられることも首都圏や福岡都市圏など他の大都市圏ではなく北九州市での起業を決めた理由になったということです。
北九州市 武内和久市長「新しい事業をしようという若い方。あるいは新しい企業を起こそうという方が増えてくるのは街全体として活気が大きくなってきます。反転攻勢につながる大きな動力になっていると考えています」
自然減で人口自体は減少
一方で、少子高齢化の影響により、死亡数が出生数を上回る「自然減」は続いていて、人口自体は2024年も減少。
公約に掲げる「人口100万人」の達成にはまだ遠い状況です。
60年ぶりに「転入超過」となった北九州市。全国的にも深刻な人口減少に歯止めをかけられるのか、真価が問われるのはこれからです。