きょう1月16日は「禁酒の日」。1920(大正9)年のこの日、アメリカで禁酒法が実施されたことにちなむものです。
そして、実は「天気予報をする側の心得」の中にも禁酒について書かれたものがあり、この日が来るたびに、私自身、その心得を肝に銘じています。
今も語り継がれる天気予報の心得
その「天気予報をする側の心得」は、気象学者で第5代中央気象台長の藤原咲平博士によって、1929年、当時の予報課職員に訓示されたものです。藤原博士と言えば、「複数の台風が近くに存在すると、お互いに影響しあって、複雑な動きをすることがある」という「藤原の効果」でも知られています。
天気予報をする側の「心得」
一、身体を健全にすること
二、精神を健全にすること
三、他事に携わらぬこと
四、遊戯に凝ってはいけない
五、研究ものはいけない
六、睡眠不足はいけない
七、予報前の酒はよろしくない
八、心を動かさぬこと
普段の生活や仕事をする上でも、大切なことが並んでいます。
「研究ものはいけない」とは?
分かりにくいものを少し解説します。
五、「研究ものはいけない」
気象台予報課の職員は、日々の予報以外にも様々な気象現象の研究をして、学会で発表したりするなどの仕事もあります。ただ、予報当番の日には、自分の研究に没頭するのではなく、予報に重きを置けという意味です。
「心を動かさぬこと」とは?
願望を予報に入れない、予報が外れても動揺しないことだそうです。
このことについては、私自身、若気の至りで、とても痛い思い出があります。
ゴールデンウイークの天気予報で、雨が降るおそれがあるにもかかわらず、晴れる確率をやや高めに発表し、土砂降りの中で雨に打たれながら大謝りしたり、ぐずついた天気が1週間以上続いた後、やっと「晴れで、雨の確率0%」の予報が発表されたため、「あす、雨が降ったら髪を切って坊主になります」と口走り、坊主になってしまったり。反省しきりです。
「禁酒の日」に、改めて見る「予報の心得・「予報前の酒はよろしくない」
そして、藤原博士は、「天気予報をする側の心得の七番目に「予報の前の酒はよろしくない」と記しています。
まさにその通り。私たちも、台風前や梅雨時期は、普段から深酒しないようにしています。
そして、「予報前の酒はよろしくない」に続く、藤原博士の言葉には、親近感を持たざるを得ません。
「ただ、禁酒せよとは言わぬ。そうなると筆者の如きは一番困る」
きょうは、「禁酒の日」。だが、全国的に冷え込んでいる。熱燗でも呑んで、体を温めてゆっくり休み、あす以降の天気予報に励もうと思う。
RKB 気象予報士 龍山康朗