100万人に1人と言われる「KID症候群」と診断された1歳の女の子。
先天性の難病「魚鱗癬」の一種で難聴になっています。
他の1歳児と同じように、言葉を覚えるのと同時に手話も覚えながら家族や保育園でもコミュニケーションをとって日々成長しています。
”100万人に一人”の難病
福岡市に住む満生千尋ちゃん(1)
両親と兄の珀ちゃん(4)の家族4人で暮らしています。
千尋ちゃんの母 満生雛子さん
「今は乾燥はするけど比較的肌の状態がすごく良くて、いま使っている薬は1種類です。前は足の裏だけとか分けていたんですけど」
千尋ちゃんは生まれてすぐに先天性の難病である「魚鱗癬」の症状が疑われ、生後9か月のころその一種の「KID症候群」と診断されました。
「KID症候群」とは遺伝子の異常によって、魚鱗癬の皮膚症状のほか難聴や角膜炎などの症状が出る病気で、発症は100万人に1人と言われています。
現在、確立された治療法はありませんが、人に感染することはありません。
千尋ちゃんの母 満生雛子さん
「ドーンっていう太鼓の音は聞こえてるって言われて、最近私が補聴器付けた状態で名前を呼んだりすると反応はするようになりました」
少しずつ手話も覚えて・・・
現在、千尋ちゃんは補聴器を付けて生活していて、日常の会話では手話を使うこともあります。
千尋ちゃんの母 満生雛子さん
「よくやってますね。最近はパパって言う手話もほとんどできるようになって、すごく増えてきたね。もう『おはよう』とか完璧で、朝起きたらいつも自分でしています」
千尋ちゃんは、月に2回、言語聴覚士から手話や言葉を学ぶ療育に通っています。
まだ1歳で理解できる言葉も少ない千尋ちゃんは、遊びの中でコミュニケーションの取り方を学びます。
言語聴覚士 大塚裕美子さん
「ちょうだーい。先生もしたい」
「どうぞ」
「(手話で)上手」
最初は補聴器に慣れるところからスタートし、段々と使える手話も増えてきています。
言語聴覚士 大塚裕美子さん
「ボールを入れてみたり、絵本とか実物とか模型を使ってちょっとでも興味を持ってやっていけるように。楽しんでいつもにこにこ笑顔でやってます」
最初は難聴を受け入れられず・・・・
千尋ちゃんの母 満生雛子さん
「最初は難聴ということを受け入れられてないままここに来て、ここに来ることでこの子が難聴っていうのをはっきり分かるような気がして最初は来るのが怖かった。すごく不安だったんですけど、実際に来てこの子が頑張る姿を見たり、先生たちがやっぱり一生懸命この子に関わってくれる姿を見て、私も難聴に対して、今は受け止めて一緒に頑張っていこうって思えるようになりました」
保育士も手話・指文字でコミュニケーション
現在、千尋ちゃんは、母親の雛子さんが保育士として働く保育園に通っています。
保育士「満生千尋ちゃん」
千尋ちゃん「はい!」
千尋ちゃんとコミュニケーションを取るため、保育士たちも、簡単な手話や指文字を学び、会話に取り入れています。
リトルワールド六本松保育園 中村尋子 園長
「保育士の方も声をかけるときに指文字で『ちー』っていう風にしていたと思うんですけど、それをすることで、千尋ちゃんとしっかり目線が合ってコミュニケーションを取ることができるようになってきたかなという印象を受けています」
保育士も千尋ちゃんと関わる中で、さまざまなことを学んでいるといいます。
リトルワールド六本松保育園 中村尋子 園長
「配慮が必要なお子さんというのは、保育士としてもいろんな勉強が必要であったりですとか、そういうところもあるので、私たちとしては学びにつながったというかチームワークにつながったと感じています」
人工内耳の手術を検討
千尋ちゃんがよりしっかりと音を聞き取れるようにするため、雛子さんたちは、音を電気信号に変えて脳に伝える「人工内耳」の手術を検討しています。
去年8月に手術を行う予定でしたが、千尋ちゃんが体調を崩してしまったため延期を余儀なくされました。
千尋ちゃんの母 満生雛子さん
「耳鼻科の先生に言われたのは、なるべく1歳半までにした方が良いって言われて、多分2歳超すけど仕方ないかなって思っています」
もうすぐ2歳「何気ない日常・・・それだけでいい」
そのような状況の中でも千尋ちゃんは手話などを通して、家族や友達と少しずつコミュニケーションが取れるようになっています。
2か月後には2歳の誕生日を迎える千尋ちゃん。
両親も我が子の成長を感じています。
千尋ちゃんの父 満生仁さん
「将来の心配もあったんですけど、元気だから病気のことも忘れさせてくれるくらい、良い子に育っているのかなと思います」
千尋ちゃんの母 満生雛子さん
「何もないこういう日常が続いてほしいなと思うし、それだけで良いなと思います。とにかく元気で健康に育ってくれればいいなと思います」