福岡県新宮町の霊園にあるユニークなお墓にいま、予約が殺到しています。
人気の理由を取材していくと、「令和のお墓事情」が見えてきました。
福岡の霊園がつくった全長53メートル高さ3.5メートルの墓
RKB 堺恭佑 記者
「いま予約が殺到しているというのが、こちらのお墓。小高い丘のように見えますが、引いて見ると、教科書で見た前方後円墳型のお墓なんです」
福岡県新宮町の「新宮霊園」が2年前に造った前方後円墳型のお墓。
全長が53メートル、高さ3.5メートルと圧巻のスケールです。
天然芝が全体を覆い、周囲には古墳時代にも墓の周りに埋められた埴輪が並べられています。
新宮霊園 本田宏之 経営室長
「当初の予定のやっぱ3倍のスピードでですね、初年度は特にお申し込みいただいておりまして、私達も正直驚いてる状況でしたね」
30センチ四方で穴をあけ3100区画 価格は28万円
本来の古墳は、1人の権力者のために造られたとされていますが、この古墳型墓地は違います。
記者Q
こうやって穴が開いてるんですね
新宮霊園 本田宏之 経営室長
「そうですね、一つ一つの区画を30センチ四方で穴を設けまして、そちらにご納骨当日前に土を取りましてご納骨の準備をさせていただいております」
大きな古墳型の墓の中に複数の遺骨が埋葬される合同墓の形で、3100区画用意されています。
価格は1区画28万円、別途、永久管理費7万7000円が必要ですが、霊園が月1回の合同法要を行うなど、永久的に墓を管理してくれます。
当初は年間300人分を目標に区画の販売を始めましたが、1年で予想の3倍にあたる900人分の契約が成立。
現在、全区画の半分を超える1700件が申し込み済みだということです。
”土にかえる”がテーマ骨壺ではなく袋に・・・
この古墳墓、遺骨の埋葬方法も変わっています。
新宮霊園 本田宏之 経営室長
「通常は骨壺に埋葬するんですが、土にかえるということをテーマに、袋にですね、お骨を移し直しましてこちらの袋ごとに埋葬させてもらいます」
遺骨は100年単位の長い時間をかけて土に還るということで、骨壺も選べますが、袋を選ぶ人が圧倒的に多いといいます。
約1000人が眠る「寂しくないかなっていう気がする」
現在、およそ1000人が眠る古墳墓、平日でも多くの人が墓参りに訪れます。
叔父の墓参りに訪れた人
「叔父が生前のときですね。来てちょっと見て、本人がここでいいって決めたので」
墓参りに訪れた人
「自分とこだけでもないしね、皆で一緒に寝てるのかなっていう気がするけどね、うん。寂しくないかなっていう気がする。ほら知らん人とあの世でも話してるのかなって」
取材に訪れた日にも2組の納骨が行われました。
納骨した人
「向こうに墓があったんだけど、墓じまいしてこっちに来ました」
記者Q
向こうっていうのは?
納骨した人
「同じ霊園の中にあった。安心ですよね。もうあとは構わないから」
新規の申し込みに加えて霊園内にある一般的な墓からの引っ越し「改葬」まで。
「迫力に圧倒」同業者も視察に訪れる
あまりの人気ぶりに、同業者が毎月のように視察に訪れています。
視察に訪れた同業者
「天然芝か人工芝かで悩まれたと思います。当然維持コストのことを考えたら人工芝の方がいいということなんですけど、最終的に天然にしたのは?」
新宮霊園の担当者
「やっぱり自然に還るというところで」
この日は、東京、大阪からやってきた霊園の担当者が雨の中、熱心に質問していました。
視察に訪れた同業者
「いやもう圧倒されましたね。迫力に。他にないので。樹木葬自体が一つのブームでもう飽和状態なんですね。ですからさらに次の新たなお客様が喜んでいただけるような、やっぱり祀り処というのを今こういった形で研修で視察させていただいて。これだけの敷地があればね。やってみたいですけどね」
おにぎり持って訪れる人も
墓石も手がける仏壇・仏具大手の「はせがわ」が実施した調査によると、ここ5年で購入されたお墓の数では霊園などが管理を行う永代供養墓が一般的なお墓を上まわりました。
また、墓を購入しようとする人の9割近くが永代供養墓を検討しているのに対し、一般的なお墓は5割を下回ったということです。
新宮霊園 本田宏之 経営室長
「最近はやっぱり自分たちのためにと、そして子供にいかに迷惑をかけないかっていうのが選択肢の一つなのかなと」
新宮霊園でも古墳墓と同じく人気なのが、庭園型の樹木葬エリア。
緑に囲まれた先には玄界灘も一望できる気持ちのいいロケーションにプレート型など小ぶりの墓石が並んでいます。
そして墓石の周りを彩る花はもちろん霊園が手入れしています。
夫の墓参りに訪れた人
「子供がもう2人だけのこと考えてって。自分たちだって子供と先のことは相談しながらどうなるかも全く分からないし、もう一生ここに福岡にいるっていうことも、それもわからない」
墓参りに訪れた人
「おにぎり持ってきてね。景色見ながら。きょうは月命日。だからだいたい月に2回、結構頻繁に来ています。ちょっとねレジャーっておかしいですけどね」
超高齢社会の日本。
核家族化の進展も相まって、墓や墓参りの形も変わってきているようです。