1月15日、福岡市の西南学院大学大学院に在籍する鈴木結生さんの著書「ゲーテはすべてを言った」が芥川賞を受賞しました。
受賞から2週間近く経った27日、日常生活や小説を始めたきっかけとなった震災への思いなどについて、話しを聞きました。
図書館で10時間執筆することも
RKB 本田奈也花 アナウンサー
「芥川賞の受賞おめでとうございます。会見からおよそ2週間経ちましたけれど反響はいかがですか?」
芥川賞受賞「ゲーテはすべてを言った」著者・鈴木結生さん(23)
「いやもう本当に多くの方が見てくださって、西新は非常に沸いていると思います。我ながら。自分のことじゃないみたいな感じ。自分の中で大切に作ったものが自分の尊敬してる作家の人たちに認められたっていう意味で実感は湧いてるんですけど、それに紐づけられたようなものはやっぱりちょっと不思議な気持ちがしますね」
西南学院大学の大学院に在籍している鈴木結生さん。英文学の研究をしながら、小説家として、執筆もしています。
創作活動は大学内の図書室や自習スペースで…
鈴木結生さん
「ここでいつもパソコンを置いてやっている」
RKB 本田奈也花 アナウンサー
「やっぱり本がずらっと並んでいる」
鈴木結生さん
「そうですね。今、期末のレポートの時期で、あと次作の参考資料が集まっている」
RKB 本田奈也花 アナウンサー
「大体ここに何時間ぐらいいるんですか?」
鈴木結生さん
「一番書いてるときだと10時間とか、それぐらいいるかもしれないです」
受賞作を書くきっかけは
「ゲーテはすべてを言った」は、ドイツの文豪、ゲーテを研究する日本人学者が初めて見聞きしたゲーテの言葉の出典を探し求める物語。作品には、実在する偉人たちの名言が数多く出てきます。
鈴木結生さん
「名言とか大人が言うじゃないですか。そうしたら、本当かみたいに調べたりするタイプだった。意外と間違ってることが多かったりして。名言って出典が分からないことが多いんですよ。だけどみんな使ってるみたいな。それ不思議だなと思って、それについて書きたいなと思ったんですよね」
RKB 本田奈也花 アナウンサー
「とにかく引用が多いという印象を受けた。どこからその知識を得ている?」
鈴木結生さん
「とにかく本が好きなので、自分が好きな本のことがやっぱりいっぱい出てくるっていうのは、好きなものを全部入れてやろうという感じで作った作品かなと思います」
年間1000冊を読破・・・日常生活は
年間に読む本の数は1000冊に上るという鈴木さん。普段、どんな生活を送っているのか教えてもらいました。
鈴木結生さん
「朝8時ぐらいに起きますね」
RKB 本田奈也花 アナウンサー
「ちょっとゆっくりめ?」
鈴木結生さん
「10分で支度して学校へ行く」
RKB 本田奈也花 アナウンサー
「やっぱり読書、執筆の時間も毎日しっかり含まれるんですね」
鈴木結生さん
「重要なのがこの登校の時間で、朝8時から9時まで大体40~50分かけて家から学校まで歩いてくる。小説を書き始めると自分の中で執筆するモードっていうか、なんかその感じに持っていくために徒歩がいいっていうことが何となく分かって。歩いてると、まず体が目覚めていって同時にいろいろな景色が見える中で、すごく着想も湧くし、なんかすごくここの時間がとにかく大事で暇があったら散歩する。西新を回り、百道とか歩きながら、頭をリセットして小説を書くという感じ」
今回の受賞作品を大学の図書館で約1か月で作り上げたという鈴木さん。
作品のなかでは、独特の表現を用いる言葉がありました。
「済補」とは
RKB 本田奈也花 アナウンサー
「「済む」という漢字に「補う」と書いて、「スマホ」と表現されていた。こういったところにもこだわりがある?」
鈴木結生さん
「まずスマホっていう言葉がね、あまり小説では使いたくない感じがした。電子機器の固有名詞は小説と相性悪いと思う。ポケベル、ファクシミリとか、とたんに時代感が出る。星新一さんとか手塚治虫という漫画家はすごくそれを意識していて、必ず最新のものに書き換えてたんですよね。新作が出る度に。夏目漱石がすごく好きなんですが、漱石って当時、イギリスに留学してて、たくさん英語の言葉を日本に持ち帰ってきたんです。けど、それを当て字に必ずするんです。僕はすごくその感覚が好きで、今回それをやってみた」
一つ一つの言葉にこだわる理由。そのきっかけはあの震災でした。
震災体験が作家の原点に
鈴木結生さん
「生まれが実は福岡なんですよね。だけど1歳から10歳ぐらいまで福島にいて、やっぱり震災が、小学3年生のときあったんですけど、やっぱそれがすごく自分の中で大きくて。メディアとか政治家、研究者の専門家の言葉の信頼性がどんどん薄れていった体験だった。みんな言うことが違う。大人が。学校へ行っても、子供たちは自分の親の意見を持ってきてるから喧嘩になったり。言葉っていうものへの懐疑感とか不信みたいなものが強く子供の時にあったのと同時に、それでも正しい言葉とは何だろうとか、信じるべきものは何だろうっていうことをやっぱり考え始めるきっかけになったので、福島は本当に大きな経験だった」
RKB 本田奈也花 アナウンサー
「小説を書き始めるきっかけも福島の体験にあった?」
鈴木結生さん
「小学6年の時に福岡に引っ越してきたんですけど、その時に、福島での思い出っていうのを形に残すために初めて小説を書いたんですよね。それを福島の友人と学校の先生に送って、それがだから最初の小説の読者っていうか。今回の受賞のこともとても喜んでくれた。福島は思い出深いです」
いずれは長編も
RKB 本田奈也花 アナウンサー
「鈴木さんの今後の目標は?」
鈴木結生さん
「3月に第3作が出て、一応今回3部作という位置づけをしていて、それが終わった後は、これから実験。小説っていうのが今、僕にはまだ理解できないところがたくさんあるので、それを知るためにたくさん書いて、いずれ力がついたら長編を書いていきたいなと思っています」
ちなみに福岡の食べ物で好きな物を書いてもらいました。
1位は西南学院大学近くの定食店の「チキン南蛮」この料理が大好き過ぎて、家で真似をしようとしたほどだそうです。
2位は寿司
3位は福岡市中央区にある福島発祥のラーメン店。お祝いのときは家族全員で食べるそうです。