新米が出れば落ち着くとみられたコメの価格。その新米も価格がどんどん上昇し、販売を制限する店も出始めました。
一方、コメ農家も苦境に立たされています。値上がりが儲けにつながっておらず、大規模コメ農家の倒産は去年、過去最多となりました。
今の価格が、下がる状況ではなさそうです。
コンビニもおにぎりを値上げ
1月20日、大手コンビニチェーンセブンーイレブンは、最大で、おにぎりを28円、お弁当を60円、値上げすることを発表しました。
コメの価格が上がっているからです。
訪れた客
「ニュースで見ました。仕方ないと思うけどもっと安くなって欲しい」
訪れた客
「仕方ないですよね。コメが上がってるから。大体自炊してたんですけどコメが上がったんで弁当にしています」
「1家庭10キロまで」販売制限も
福岡市南区にあるこちらのコメ販売店は、仕入れが前年の7割程度にとどまっているためこの日から1家庭10キロまでと、販売数量の制限を始めました。
お米のしんかい 従業員
「タイミングがあれなんですけどちょうどきょうから。在庫がないわけじゃないんですけど、結構市場に出ているお米の価格が高くなって仕入れ価格としても厳しくなってきたので」
天候不順による不作でコメの奪い合いが起きていて価格は今月に入っても上がっています。
お米のしんかい・みのりや 新飼哲哉 代表理事
「令和5年産と比べると2倍以上ですし、新米についても、新米の季節の価格から現時点、年明け1月からは、さらに1.5倍から1.8倍ぐらいに価格が更に上がっているという状況」
新米価格、今年に入ってさらに1.5倍に
農林水産省の統計によりますと、令和6年=2024年産のコメの取引価格は、新米が出始めた11月の段階で前年の1.5倍に達しました。
この店の場合、令和6年産のコメの仕入れ価格は、新米の時期で前年のおよそ2倍。
加えて、今年に入ってからは、需要に供給が追いつかず、そこからさらにおよそ1.5倍と、コメの価格がさらに高騰しています。
価格上昇の理由は2つ
北海道大学大学院 農業研究院 坂爪浩史 教授
「コメの価格が上がっている理由は大きく2つあります。1つは生産コストの上昇です。2つ目は需給の逼迫」
農業経済学が専門の坂爪教授は、肥料代や燃料代などコメの生産コストの上昇と不作が重なって需給の逼迫に繋がっていると話します。コメの価格は上がっても、生産コストの上昇分を吸収できるほどではなく農家にとっては厳しい経営環境が続いています。
生産者からみたら”まだ安い”「腹いっぱい我慢してる」
豊地の郷 井手正宏 理事長
「生産者から見たらまだ適正価格に至っていないと思う。腹いっぱい我慢してる」
井手さんは、コメの生産では利益を上げられず、コメ農家の後継者不足も深刻になっていると話します。
Q お米を作っても儲かっていない?
豊地の郷 井手正宏 理事長
「儲かってない全然。とんとんか赤字を出すか。農家さんの手取りを考えないくらいでとんとんです。自分たちの農家さんの手取りを減らすしかない。だから担い手がいないわけですよ。自分の子供とかにも、儲かるけんコメ農家をしろと、できるぞと、それが言えん立場なんです。普通にサラリーマンにいって年収300万円から400万円とってきた方が楽ですよ」
帝国データバンクによりますと去年1年間に倒産・廃業した農業生産法人などの大規模なコメ農家は、前の年に比べて2割増え、過去最多となりました。
コンバインはベンツと一緒 1000万円 10年前の倍近く
豊地の郷 井手正宏 理事長
「このトラクターも500万円くらいしますけど、今買ったら50万円・100万円上がっていると思います。コンバインはベンツと一緒。1000万円、1200万とか。10年前と比べたら、倍までいかないけど、倍近いよ」
肥料や燃料代の高騰だけでなく、農機具の価格も100万円単位で上昇し、コメ農家の経営をさらに圧迫しています。
コメ農家が儲かるしくみつくらないと生産量はあがらない
こうした状況を受けて、JAも、新たな支援を始めています。
JAみなみ筑後 東原弘幸 瀬高選果場長
「農協でも新たな部署を立ち上げましてそこで人的支援、人手が足りなかったら人手を送るとか機械ものがわざわざ買わなくて良いように、レンタル事業を進めている最中です」
コメ農家の経営が安定しなければコメの生産量が上がらないため価格を安定させるためにもコメ農家への支援が必要だと販売店からも声が挙がっています。
お米のしんかい・みのりや 新飼哲哉 代表理事
「お米農家さんがやはり儲けていただくような仕組み・制度がしっかりできていない限りはお米の生産量は上がっていかないと思っています。生産量が上がっていかない限りは需要と供給のバランスがとれていかないと思いますので、適正価格を求めるためには、安定した生産量が絶対的に必要なことかと考えています」
コメの値上がりは消費者にとっては頭が痛いところですが生産コストの上昇を考えると今の価格が下がる状況ではなさそうです。