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「僕らの力でなんとかしたい」かつての米どころは耕作放棄地に…地元高校生が“棚田保全”にかける情熱

南海放送NEWS 2024年11月1日 17時0分

南海放送が2年前から継続取材している愛媛県西条市の「千町の棚田」。耕作放棄が進む中、地元の高校生が保全活動を進めています。今年も実りの秋となり、迎えた稲刈りですが、その稲がまさかの事態に!?千町の棚田の秋です。

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西条市旧加茂村。山の斜面に幾重にも連なる石積みの棚田。かつて県内有数の米どころとしてその名を馳せていた千町の棚田です。2300枚あった棚田は高齢化と過疎化で、今はその8割が耕作放棄地となっています。

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この夏、稲の天敵「ヒエ」の駆除作業を行っていたのは、西条農業高校の「棚田チーム」。千町の棚田で稲の栽培を行うほか、美しい棚田の風景、そして現状を知ってもらおうと活動しています。

棚田の8割が“耕作放棄地”となった経緯は

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棚田チーム 得居大次朗さん:

「きょうは棚田を散策しながら、みんなで棚田のことを知ってもらおうと」

この日千町の棚田に集まったのは、棚田チームと西条に住む人たち。棚田の役割を知ってもらうために、年6回開いている環境学習会です。

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得居さん:

「これが棚田の絶景スポットなんですけど」

生徒達が案内したのは棚田が一望できるおすすめの場所。

得居さん:

「見てもらったらわかるんですが、下の方の棚田は整備されているんですけど、上の傾斜が急にきつくなって機械が入れないから棚田の(手入れ)ができなくなってるのが現状です」

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成高久豊先生:

「昔は米をいっぱい作りよったんよ、ここはね。水は豊富一日中日が当たるということで水田が多かったんよ」

棚田チームを率いて10年。西条農業高校の成高先生。

「昔は政府が米を買ってくれてたんやけど、 米が余り過ぎるから米を作るのを減らしなさい、補助してあげるからと言って。そしたら機械の入りにくい所から放置されだした」

昔の姿に一歩ずつ

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得居さん:

「ここの水路はいつも水は流れてないんですけど、最近の雨できょうは流れているんで緑のダムの役割を棚田が果たしてくれていて、きれいな水が下に流れている」

山に降った雨を貯めることで「小さな治水ダム」の機能をもつ棚田。チームのメンバーは、棚田には稲作以外の役割があることも伝えていきます。

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丹原からの女性:

「何年か前に来た事があって、そのあとでこの活動の話を聞いて、あれからどれぐらい変わったんかなという興味もあったんで」

Q.依然と比べて変化は?

「こんなにきれいな田んぼじゃなかった」

環境を学ぶ大学生:

「景色もきれいだし、食料を作る以外の役割もあるので、完全に元の姿に戻るのは難しいかもしれないけど、少しずつ戻っていけばいいと思いました」

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成高先生:

「冬になったら草刈りをして石垣が全部見えるようにするからね。目標はこれ全体なんよ。全部見えるようにしたいんよ。100人おったら一人1枚刈ったらね。今年は参加者が少し増えるから、だいぶ刈れるだろう思う」

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得居さん:

「昔の姿に一歩ずつ近づいていくのが大事だと思うんで。僕らの力でなんとかしたい」

少しずつでも着実に、保全の輪が広がっています。

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10月。千町の棚田に秋が訪れました。五穀豊穣を願う秋祭り。かつては住民が神輿を担ぎ山道を上り下りしながら地区内を巡っていましたが、過疎化で、15年前には神輿を担いでまわることが難しくなり、祭り自体も存続の危機に。そんな中、今年は棚田チームが担ぎ手として参加しました。

およそ150キロある神輿。高校生8人で担いでも持ち上げるのに一苦労です。

「そりゃそりゃそりゃ!」

千町の棚田にかつての光景が蘇ります。

待ちに待った秋の収穫、思いがけない事態に

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田植えから130日。待ちに待った収穫の日を迎えました、が…。

成高先生:

「これ。ヒエをとってないのもあったんやけどな。やけどひどいわいこれな。こんな感じ」

チームが植えた稲は籾がなくなり、稲穂は倒されていたのです。

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成高先生:

「ここから入っとった。このちょっとの隙間で入るけんね。やからサルは見よるんよ。どっかでな。人がきとったらこんけんの。2、3日来んかったらやっちゃろう思って見よんやと思うんよ」

千町の棚田では、サルやイノシシなどが収穫前の作物を食べてしまう被害が増えているといいます。

成高先生:

「10年前もこんなにやられたんよ。今年の夏は暑かったろ。今も暑かろう?やけんエサがないんやなかろか思ってな。でこんな所に来たんやないかと思うんよ」

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棚田チーム 柴快心さん:

「悲しいですよね、頑張って植えたのにこんなになっとったら、何のために頑張ったんやろなと思いますよね」

成高先生:

「仕方ないわいな、サルも生きとるんやから。サルが草引きしてくれたらね」

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今年の収穫量は例年の半分ほどになってしまいました。

耕作放棄された棚田が水田に戻るまでにかかる時間は2年。少しでも水田を増やして元の棚田の状態に戻したいと願い、活動を続けてきた西条農業高校の棚田チーム。結成10年、その思いは後輩たちにしっかりと受け継がれ続けています。

環境工学科の生徒たちとビッグプロジェクトを考案中

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先週金曜日、西条農業高校の環境工学科の2年生22人が棚田を訪れました。週に1回、授業の一環で放置竹林の整備や棚田の調査をしています。

環境工学科 伊藤彪月さん:

「(棚田は)半分家みたいな感じです。毎週来てるんで」

環境工学科 明日秀惺さん:

「僕の家もまわりに山があって山が好きなんですよね。若者が今少ないんで色んな人を増やしたい」

この日の授業では生徒たちが考えた、ある計画の下見も行われました。

得居さん:

「なんかライトアップしよるじゃないですか。だからそれが見える所の方がええっすよね」

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毎年2月~3月にかけて開催している棚田のライトアップ。棚田を優しく照らす竹灯籠の明かりを一望できる場所が条件です。

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「ここええやん!あいとるやん!」

棚田を下から一望できる場所。

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環境工学科 高橋蓮太さん:

「僕らいつもここ来て竹ばっか切りよんで、竹を使った展望台ということで、上はほぼ竹オンリーで」

Q大きさは?

高橋くん:

「家ぐらいですか?笑 作れたらいいですけどね、それぐらいは」

棚田に人を呼び込もうと、放置竹林で伐採した竹で展望台を作るというビッグプロジェクト。デザインも全て生徒たちが考えました。

得居さん:

「千町に住んでる人だけじゃなくて外からもいっぱい人が来てくれた方が活性化につながると思います」

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展望台は棚田を上からも…

生徒たち:

「あ…だめやもう上がれん。上がれんかったら意味ないやん。こんな高い所誰っちゃこんやん」

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成高先生:

「ヒントはここを草刈りたいなと思っとんよ」

生徒:

「じゃあここやん」

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今は耕作放棄地で雑草に覆われているこの場所にも展望台を作ることに。

高橋さん:

「全然違う!ここからやったら景色いいんでワクワクはしますね」

かつての景色を再び。高校生の眼差しが、この地の未来を照らし始めています。

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