皆さんが子どもの頃は「亥の子」ってありましたか?
松友アナ:
私の地区ではなかったんですが…聞いたことはあります!
白石アナ:
石を何度も地面に打ち付けたり…お菓子ももらえたな~とか。この時期になると記憶がよみがえってくるものです。ナゾ多き亥の子に注目です!
子どもたちが家々回り 石やワラをついて繫栄願う
あなたの町には、ありますか?ナゾ多き愛媛の風習、「亥の子」。
今月7日の夜、松山市別府町の集会所に集まったのは、地域の小中学生、およそ60人です。
子どもたち:
「さー えんし えんしのう」
子どもたちは地区内の家を訪ね歩き、大きな石に、たこ足状に結ばれたロープを引っ張り上げながら、軒先の地面に何度も石を打ちつけています。
Q亥の子どうですか?
子どもたち:
「楽しいです!」
「めっちゃ楽しい」
「正直、腕は痛いです」
石をついた家には子孫繁栄や無病息災を願うお札を渡し、家の人からはお菓子をもらっています。そう、これが‟亥の子”です。
亥の子の始まりは?かつて「禁止令」が出されたことも
民俗学が専門の愛媛大学・大本特定准教授、改めて「亥の子」って、どんな行事ですか?
愛媛大学地域協働推進機構 大本敬久准教授:
「元々は亥の日、亥の刻に餅を食べると無病息災になるという。中国から入ってきて平安時代の貴族たちの俗信があったんです。それが行事になって旧暦の10月の亥の日に、子どもたちが石をついたりワラをついたり、地面を叩くことで地面の中の悪い物を追い払う。 そして新しい年、新年を迎えるための準備をし始めるための行事と言われています」
大本さんによると、「亥の子」はおよそ300年前から西日本の中国地方や香川県のほか、北部九州で盛んに行われていて、中でも愛媛は‟聖地”とも呼べるほど盛んな場所なんだそう。
大本さん:
「昔‟亥の子禁止令”が出たところがあるんですよね。1960年代前後なんですけれど、子どもたちだけで行う行事なので、子どもたちだけで夜家を回って、それが物乞い行為だっていうのであまり教育的によくないだろう、危険だしっていうところもあって。香川県は戦後亥の子がほとんど廃れていって、そこから復活したところだけ今やっている。愛媛は多分規制できないくらい盛んだったんじゃないかと思います」
こちら、別府町には元々「亥の子行事」はありませんでしたが、住宅開発で地区内に子どもが増え始めた19年前、当時の分館長の発案で始めたそうです。
当時の分館長 森棟保彦さん:
「北条の亥の子歌を教えてもらって始めました。子どもたちが喜ぶような地域に 思い出になるようなことがしたいなと考えたんですけど」
スーパーの店員:
「ありがとうございました!」
子どもたち:
「お菓子いっぱいもらったよ!」
「やったー!」
行事の世話をする保護者・網矢亮さん:
「子どもたちの笑顔を見て、子どもたちに逆に元気をもらってます。(亥の子が)後世に残っていってもらえたら嬉しいですね」
亥の子を入れてもらった住民:
「最後の『この家繁盛せい』いうん私気に入っとんです。縁起物ですからね、毎年入れております」
松山市の南部、荏原地区ご出身のお母さんも、亥の子をやっていたそうで…
女性:
「私ら小さい時はワラで一人ひとりが『おいのこさん祝いましょ』と。十でとうとうおさめた!いうてね、もうええ歌だったんですよ」
衣装も歌も地域で異なり 個性的なスタイルに
今月9日、宇和島市吉田町の鶴間地区に伺うと…やってます!亥の子!こちらでも、石を地面に打ち付けるスタイルですが、地区を練り歩くのは、昼間。
そして…
Q.重くない?
女の子:
「重くない」
子どもたち、背中に色とりどりのタスキを何本もくくりつけています。
歌を聞いてみると…?
「♪いのこの のりは…」
「♪おやどのかみさま ごめんなさい!」
鶴間地区に5種類ある‟亥の子うた”。神社やお寺など、場所ごとに歌い分けているそうです。
女の子:
「いたち わらうな ほねかます おもしろや」
合いの手に合わせて1人1節を歌うソロパートも。
小学1年生 友岡綺衣さん:
「♪だんなだいこく かみさんえびす できたこどもはふくのかみ おもしろや」
子どもたち:
「覚えてくるしかない」
Q.大変じゃなかった?
「いや、あんまり。簡単だった」
歌や衣装など地域によってスタイルが違うのも、亥の子の見どころです。
大本さん:
「例えば北条に行くと、その年に 生まれた子どもがいるおうちでのぼりを立てたり、宇和島市の津島町では子どもがいなくなったので大人がやり始めると。ご高齢の方がやり始めて、おやじ亥の子組っていうのを作って今でもやってるところがあります。物事を活字とか映像とかそういったもので得ていく世の中じゃなく、地域の中のコミュニケーションで知恵、知識、技術を獲得していくという教育的側面でも価値があるのかなって」
小学6年 清水渉さん:
「十でとうとうおさめた みかんこ たちばな だいだいよろこび きがはえた」
今年、鶴間地区で参加したのは11人の小学生。
何のためにやるか知ってる?
清水さん:
「ストレス発散!」
妹:
「違うやろ、絶対違うって」
亥の子のいいところは?
小学1年生 友岡綺衣さん:
「みんなで力を合わせて石を引くところと、みんなで声を合わせるところ」
保護者 中井健二さん:
「今年声が出てますね、子どもたち。いつもよりも。今までは全部の1軒1軒まわりよったんですけど、今年は子どもも少ないので、5~6軒くらいをまとめて1か所で、というのを20か所くらいという形にしました」
子どもの数が年々減り、今年は回る家を少なくするなど対策が必要になりましたが、亥の子は地域にとって大切な行事のひとつだといいます。
地域の人たち:
「かわいかった、ありがとう」
「続いてほしいですね、続く限りはね」
亥の子にアツい吉田町。地区を回るだけでは終わりません。
Q.鶴間の強みは?
小学6年 毛利天音さん:
「やる気とでっかい声だと思います」
小学6年 清水渉さん:
「個人個人のパフォーマンス、声の大きさとか、声の大きさだけじゃなくて、石を引く時の キレとか。そういうのを頑張っていきたい」
中井さん:
「これは歴代の亥の子大会での優勝とか準優勝とかのクリスタルです」
ナンバーワンを決定!?50年続く亥の子大会
吉田町では、50年前から地区対抗で石のつき方や元気の良さなどを競う「亥の子大会」を開催しています。
亥の子大会役員 濱口登さん:
「1チームずつついて、ここで採点。5項目あるんです」
記者:
「つき方、チームワーク、元気良さ、礼儀、歌い方」
今年は、鶴間を含む3つの地区が参加。この日のために練習を重ねてきた鶴間の子どもたち、緊張しながらも気合は十分です!
結果は…
アナウンス:
「優勝、鶴間愛護班!(拍手)」
女の子たち:
「いえーい!」
元気よく団結した声などを評価され、見事優勝を果たしました!
小学2年生:
「明日はもう声枯れそうです」
小学6年 友岡詩乃さん:
「みんなで力を合わせて練習もたくさんしたので優勝できてうれしいと思います」
小学6年 毛利天音さん:
「泣きたいくらい嬉しいです」「よくよく考えれば、でっかい声だけじゃなくて、団結力も必要だなって思いました」
小6 清水渉さん:
「優勝しなくても、優勝しても自分のここで亥の子をやって頑張ったっていう意思をあの穴に込めた。このトロフィーをずっと守り続けてほしいです」
この記事の動画はこちらから再生できます