■身近に潜む闇バイト
「緊急!運び案件数名分募集します(テレグラム必須)」
「お仕事紹介ホワイトからブラックまでいろんな案件ございます」
これは、実際に愛媛県警がSNSで見つけた求人広告。
一見、普通の求人広告にも見える内容だが、県警生活安全企画課の担当者によると、詳しい仕事の内容を明らかにしていないものや「テレグラム」や「シグナル」など匿名性の高いアプリを必須としている案件は“闇バイト”の可能性が高いという。
全国で相次ぐ強盗事件や特殊詐欺事件においても逮捕された実行役がSNSを通じた“闇バイト”の応募をきっかけに犯行に及んでいるケースが増加しているのが現状だ。
求人広告などSNSからの勧誘も散見される“闇バイト”の募集。
「身近に潜むもの」と思っても過言ではないくらい、今や世代を問わず、そして誰しもその危険にさらされるものだと感じる。
■闇バイトの実態
“闇バイト”による実行役の検挙はよくテレビや新聞の報道で見かける方も多いのではないだろうか。
では、実際に“闇バイト”に応募してしまった場合、どのような恐怖が待ち受けているのか、県警に取材した。
愛媛県警生活安全企画課の担当者によると、まず、連絡手段としてよく使われるのは上記でも示した匿名性の高いメッセージアプリ。
データが残りづらく、足どりがつかみにくいことからいわゆる‟捨て駒”とされる実行役との連絡手段には好都合なツールだ。
この匿名性の高いメッセージアプリを利用し、犯行グループは身分証明書のほか、本人や家族の個人情報などを要求してくるという。
その後、犯罪行為を指示されていくが、拒否しようとすると送った個人情報をもとに脅されるなどし、抜けだしたくてもなかなか抜け出せない状況が続いてしまう。
■闇バイト募集事件 県内でも…
「前に話したかけ子の案件あるんやけど乗る?」
「カンボジアとマレーシアの2か国に行かないけんのやけど大丈夫?」
SNSで“闇バイト”、特殊詐欺の実行役を募集したとしてことし9月、県警に逮捕された松山市内の男女2人の裁判がきょう、松山地裁で続けて開かれた。
起訴状などによると、2人は共謀して去年11月、松山市内に住む当時18歳の男性に対しメッセージアプリ「シグナル」を利用して特殊詐欺の実行役である「かけ子」として働くことを勧誘したなどとされている。
起訴内容について、女は「間違いありません」と認めた一方、男は「職業紹介はしておらず勧誘もしていない」などと無罪を主張した。
今後裁判は続いていくが、第一に県内でも今、このような事件が起こっていることに危機感を覚えるのは私だけだろうか―。
■闇バイト応募者らの保護 愛媛県警でも強化指示
「勇気を持って抜け出してすぐに警察に相談をしてください。警察は相談を受けたあなたやあなたのご家族を確実に保護します」
先月、警察庁の阿波拓洋生活安全企画課長が、脅されて犯罪に加担しようとする人に向けた異例の呼びかけ動画をSNSで配信。
同時に全国の警察に対し、相談してきた人や家族を保護するよう指示した。
これを受け先週末、愛媛県警でも県内16警察署と本部の全所属に対し、再度、“闇バイト”応募に関する相談者の警察保護の周知徹底を指示したことが県警への取材で分かった。
県警生活安全企画課によると、相談を受けた際には、犯罪グループから危害を加えられないための対策を助言・指示するとしていて、「闇バイトに応募してしまった場合は家族を含めて安全対策を講じるため犯罪に関わる前に早く警察に相談してほしい」と強く呼びかけている。
うまい話には裏がある。
知らぬ間に犯罪に加担してしまわないようひとりひとりの意識と注意が必要だ。