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宝塚歌劇団を法人化、独立性高める方針に舵 客観性や専門性の視点から管理

産経ニュース 2025年1月14日 21時30分

宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の所属劇団員が令和5年9月に急死した問題を巡り、親会社の阪急阪神ホールディングス(HD)が歌劇団を法人化すると決めた。鉄道、不動産、エンターテインメントと大きく異なる業種が傘下に連なる同社は、事業ごとに専門性の高い経営判断が求められる。歌劇団を阪急電鉄の一部門と位置づける現体制では管理責任を十分果たせず、今回のような事態を防ぐことができないと判断したとみられる。

「われわれが歌劇団の運営に口をはさむことは簡単ではなかった」。阪急阪神HD幹部は歌劇団との関係について、こう吐露したことがある。プロの役者集団である歌劇団の運営に、全く分野が異なる電鉄幹部が影響力を及ぼすことは簡単ではなかった。

今回の法人化では取締役の過半数を社外出身者とすることで、歌劇団の運営に客観的な視点からの助言が期待できる。また取締役会と歌劇団との間で強い緊張感が生まれることも予想され、ガバナンス(組織統治)の強化につながることが予想される。

阪急阪神HDは現在、営業利益の約9割を都市交通、不動産、エンターテインメントの3事業が生んでいるが、各分野とも他社との競争は激化し、迅速で専門性の高い経営が求められている事情もあった。

ただ、阪急阪神HDは昨年4月にリスクマネジメントの専門部署を立ち上げるなど、今回の決定とは逆に、歌劇団への直接的な関与を深めることも予想されていた。法人化が安易な組織の切り離しにならないよう、歌劇団の経営を軌道に乗せる責任が阪急阪神HDには引き続き求められる。(黒川信雄)

関西大の亀井克之教授(リスクマネジメント論)

宝塚歌劇団を株式会社化することで、会計上もコーポレート・ガバナンス(企業統治)上も透明性が高まるだろう。阪急電鉄の一部門から子会社となることで、組織風土を改めるための機動性は増すとみられる。

また、入団6年目以降の劇団員とも雇用契約を結ぶよう改めたことも重要だ。6年目以降はこれまで個人事業主だったため、労働時間があいまいで長時間の過重労働となり得る状況にあった。

ただ、課題もある。取締役の過半数を社外出身者とすることが、必ずしも透明性に寄与するとはかぎらない。どのような人選をするかが大切だ。

宝塚歌劇団は、伝統とファンに支えられて大きな成功を収めてきた。しかし、いつしか劇団員の働き方が時代にそぐわなくなっていた。本当の改革はこれからだが、ハラスメントのない組織をつくることを期待したい。(聞き手 桑島浩任)

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