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航空機の空中衝突は技術革新で減少傾向 半世紀前に雫石事故、米中衝突寸前になった事例も

産経ニュース 2025年1月30日 16時40分

米国の首都ワシントン近郊で29日、米陸軍のヘリコプターと民間小型旅客機が空中衝突する事故が発生した。多くの犠牲者を出した空中衝突事故は過去にも起きているが、近年は、信号を受信し、衝突回避指示を出す空中衝突防止装置(TCAS)の普及などに伴い、先進国を中心に減少傾向にある。

空中衝突事故で過去最大の被害とされるのは、1996年11月12日にインドの首都ニューデリー西部の上空で起きた。サウジアラビア航空の旅客機とカザフスタン航空の旅客機が衝突。両機の乗員乗客全349人が死亡した。1986年に米カリフォルニア州で起きた衝突事故を契機に始まったTCASの導入が本格化していく事故となった。

日本でもかつて大きな被害を出した事例がある。1971年(昭和46年)7月30日午後、岩手県雫石町上空で札幌発羽田行き全日空機と航空自衛隊機が衝突し墜落。自衛隊機乗員はパラシュートで緊急脱出したが、全日空機の乗客乗員全162人が亡くなった。当時国内最悪の航空機事故で、自衛隊機が訓練空域を逸脱したことなどが原因とされる。

海外では、超大国同士が一触即発に至った事例もある。2001年4月1日、南シナ海上空で米軍偵察機と中国軍戦闘機が衝突。中国人パイロットは死亡し、米軍機は中国南部海南島に不時着した。収集した情報など機密情報のかたまりである電子偵察機器が搭載されており、中国側が立ち入り調査を行ったことなどから緊張が高まった。

事故が減少傾向となっている一因は危機管理システムの1つ、TCASにある。TCASは航空機が信号を送受信し合い、衝突の恐れがあった場合、「脅威機」と認識し、回避に必要な垂直方向への回避指示を出す装置。国土交通省によると、日本では航空運送事業で客席数19、もしくは最大離陸重量が5700キログラムを超えるなどした場合、TCASの搭載を義務化している。

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