携帯電話を使いながら自転車に乗る「ながら運転」の罰則を強化するなどした改正道交法が施行された1日、大阪市内では相変わらずスマートフォンを手にペダルを踏む若者の姿が散見された。近年、スマホの普及でながら運転の事故が増加し、特に若者の死傷事故が多い。かねて自転車マナーの悪さが指摘されてきた大阪で法改正の効果は未知数だが、警察幹部は「自転車の安全利用に努めてほしい」と話す。
1日午前、訪日外国人客でにぎわう大阪・ミナミの繁華街。自転車に乗った若い男性が、スマホを手に会話しながら歩行者の脇をすり抜けていった。狭い路地でも、男性がスマホに文字を打ち込みながら自転車を走らせた。
警察庁によると、スマホ使用などに起因した自転車事故は、平成25~29年の5年間で計295件だったが、30~令和4年は計454件と1・5倍に増加。大阪府内でも平成25~29年は35件だったが、30~令和4年は53件と同様に増えている。
ながら運転による全国の死者や重傷者は過去5年間、30代までが9割近くを占め、大半はスマホの画面を注視していたことが原因だった。警察庁の担当者は「動画やゲームアプリなどコンテンツの充実化も影響しているのではないか」とみる。
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従来、ながら運転は都道府県の公安委員会規則で禁止され、5万円以下の罰金だったが、今回の改正道交法で罰則は6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金に強化された。交通の危険に生じさせた場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金とさらに重くなる。
大阪は長年、自転車マナーの悪さが指摘されており、法改正によるマナー改善が期待される。ただ、努力義務となった自転車ヘルメットの着用率(7月調査)は大阪府が5・5%と全国で最低。自転車事故による死者も昨年は37人、今年1~9月は24人で、いずれも全国ワーストだ。
大阪府警幹部は「より重い罰則が適用されるので府民には注意してほしい。自転車の安全な利用に努めてもらうため、広報・啓発を着実に進めたい」と語った。
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道交法改正に伴い、一定のアルコールを含んだ状態で自転車に乗る「酒気帯び運転」や酒類提供者に対する罰則も新設された。大阪府警などは1日、酒気帯び運転の摘発に早速着手。飲食店などは今後、酒を飲んだ客が自転車で帰れば罪に問われかねず、警察は注意を呼び掛けている。
酒気帯び運転は、呼気1リットル当たり0・15ミリグラム以上のアルコールが含まれる状態で自転車に乗った場合が対象で、3年以下の懲役か50万円以下の罰金となる。従来は酒量に関係なく正常な運転ができない「酒酔い運転」だけが罰則の対象だった。府警は1日午前、大阪市淀川区内で酒気帯び運転1件を摘発。他に酒気帯びが疑われる事案が6件あり、捜査を進めている。
さらに、酒気帯び運転になると知りつつ酒類を提供した場合も、2年以下の懲役または30万円以下の罰金だ。府警では改正法の施行前から、繁華街のキタやミナミの飲食店などを中心に啓発活動を続けている。
高級飲食店の多い北新地では10月中旬、府警の担当者が各店を訪問。「酒を提供した店にも罰則があるので気をつけてほしい」と呼びかけ、厳罰化を伝えるポスターを張り付けた。バーなどを経営する男性は「大きな罰金が科されるので、自転車で来たお客さんには、こちら(店側)からも歩いて帰るように伝える」と話していた。(木津悠介)