茨城県は2日、不要不急な救急車の利用を減らすため、緊急性がない搬送だったと病院側が判断すれば、患者から料金を徴収できる制度を始めた。料金は搬送先の病院によって異なり、最大で1万3200円が徴収されるケースもある。救急車の適正利用を促し、医療現場の逼迫状況の解消や、医師らの働き方改革につなげる狙いがある。県によると、都道府県としては全国初の取り組みだという。
新たに徴収するのは、一般病床数が200以上の大病院を紹介状なしで受診する際にかかる「選定療養費」。これまで救急車で運び込まれた患者は負担していなかった。しかし、同県では今後、軽い切り傷・すり傷のみの場合や微熱、全身のショック症状のない虫刺されなど、明らかに緊急性が認められなかったり、緊急性が低い場合、県内22の大病院に救急搬送されたケースで選定療養費の徴収対象とする。
逆に、熱中症や小児の熱性けいれん、てんかん発作などの場合、病院到着時に症状が改善し、結果として「軽症」と診断された場合でも、救急車を呼んだ時点で緊急性があるため、徴収対象とはしない。
同県は、救急搬送の6割以上が大病院に集中し、このうち約半数が軽症患者が占め、なかには緊急性の低いケースも見受けられると指摘。「救急医療現場のさらなる逼迫が進むと、真に救急医療を必要とする人へ医療を提供できなくなる事態も懸念される」と新制度を導入した理由を説明する。
ただ、「救急車の有料化ではない」とも強調する。判断に迷う場合は、全日24時間利用できる「茨城県救急電話相談(患者が15歳以上は『#7119』、15歳未満は『#8000』」に相談するよう呼び掛けている。