滋賀県警が、令和6年の県内の交通事故発生状況をまとめ、死者数が28人と統計の残る昭和23年以降最少だったことを明らかにした。令和3年に決定した滋賀県交通安全計画(第11次)の目標「7年までに死者数を35人以下にする」を1年早く達成した。要因は何だったのか。県警交通企画課の久保衛課長補佐兼交通事故分析官に聞いた。
県民意識の高まり
――ずばり、死者数が28人と昭和23年以降最少だった要因は
「JAF(一般社団法人日本自動車連盟)の令和6年の『歩行者が渡ろうとしている信号機のない横断歩道での車の一時停止率』の県内の結果が68・6%(全国平均53・0%)と過去最高を記録した。この結果が示すように県民、特にドライバーの交通ルールに対する意識が高まってきた結果だといえる。昨年、特別に何かをやったというのではない。地道な活動、日々実施している周知活動、安全教育、取り締まりがすべてかみ合った。JAFの調査結果は目安。過去には停止率が非常に低かった(平成30年は8・3%)。少なからず連動しているといえる」
――地道に継続していた具体的な運動は
「滋賀県では31年度から、横断歩道利用者ファースト運動を独自に展開している。これが県民に浸透してきた。つまり、『歩行者を見れば気を付けなければ』『横断歩道に人がいれば止まらないと』という順法精神が徐々に浸透してきたのだろう。ただ、交通事故発生件数は減っていない。今後も発生抑止のために引き続き、周知活動、安全教育、取り締まり、特に悪質運転の取り締まりを継続していかないといけない」
高齢者が死者の71・5%
――ほかの要因は
「追突防止システムなど車の性能、安全技術は進歩している。日進月歩で医療技術も向上しているので、死者数減少の要因の1つであるのは間違いない。ただ、警察としては、技術力が上がれば事故は自然と減っていく、というのは違うと感じている」
――死者に占める高齢者(65歳以上)の割合が70%を超えていた
「死者28人中65歳以上が20人だった。令和5年の死者数は17人だった。大きく増えたわけではないが、5年は全体の死者が43人と多かったので高齢者の占める割合は4割弱だった。それが、6年は71・5%を占めた。半分の10人が歩行中だった。『横断する際は左右しっかり確認を』や、『できるだけ道路に出る時間を短くして』とか、『外に出る際、夜は光の反射材を付けて』など、高齢者に対する基本的な注意喚起が本当に大事になってくる」
――死者数ゼロの実現に向けて
「特効薬はない。今回の事故発生状況を地域別、状態別、類型別など多角的に分析して、結果を取り締まりや安全教育に活用していきたい。せっかく死者数最少を更新したので、来年も更新し、死者数ゼロに向けて、地道な周知活動を続けていきたい」
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県警がまとめた令和6年の県内の交通事故発生状況によると、死者数は5年の43人から15人減った。特に長浜署管内は統計が残る昭和29年以降初めて、県内高速道路も統計が残る39年以降初めて、死者ゼロを記録した。
ただ、高齢者(65歳以上)の死者数は前年から3人増えて20人だった。全体に占める割合は71・5%(前年39・5%)にものぼった。また、死亡した歩行者は10人いたが、すべて高齢者だった。
道路別の死者数は、国道8人、県道7人、市町道など13人で、比較的狭い道路での事故が死亡につながっていた。
一方、事故発生件数は2805件(概数)で、前年より38件増加。負傷者も3429人(同)で54人増加した。
(野瀬吉信)