平成31年の東京・池袋の乗用車暴走事故で、禁錮5年の実刑判決を受け、服役中だった飯塚幸三受刑者(93)が死亡したことが25日、わかった。事故で妻の松永真菜(まな)さん=当時(31)=と長女、莉子(りこ)ちゃん=同(3)=を失った松永拓也さんは同日、X(旧ツイッター)に長文のコメントを寄せ「飯塚さんにとっても、大きな責任を背負いながら刑務所で最期を迎えたことは、とても無念だっただろう」などとつづった。
「天国で一言謝ってほしい」
松永さんは「心よりご冥福をお祈りいたします」としたうえで、「『天国で真菜と莉子に会えたなら、一言謝ってほしい』という想いは正直ある。しかし、それ以上に強い感情は抱いていない。彼が刑務所で最期を迎える結果となってしまったことに胸が痛む思いもある」と心情を吐露した。
交通事故防止に向けた啓発活動に取り組む松永さんは「今回の出来事は、高齢ドライバー問題が社会にとって大きな課題であることを、改めて考えさせられるものだと思う。懸命に生きてきた人々が意図せず他人の命や健康を奪ってしまう。そして刑務所で亡くなる。被害者や遺族も、一生事故の影響を背負う結果になる─。こうした悲劇をどう防いでいくのかを考えていかねばならない」と訴えた。
刑務所で面会「後悔にじませた」
一方、松永さんは、今回の事故を契機に高齢者と若者の対立構造になることを「望んでいない」とも指摘。「免許返納だけではなく、いかにして高齢者の方々が車に頼らずとも、安心して豊かな日々を送れる社会を築くか。それが、私たち全員にとっての課題だ」と指した上で、「逝去を受け、私たち社会がすべきことは、彼を非難し続けることではなく、彼の経験から学び、同じような悲劇を繰り返さないための道を共に考えることだと思う」と書き込んだ。
松永さんは、収監先の刑務所で飯塚受刑者と面会したことを明らかにし、「彼は深い後悔をにじませていた」と振り返った。交通事故防止に向けた啓発活動を続ける松永さんに「言葉を託してくださった」としたうえで、「それを無駄にしないためにも、私はこの出来事を未来の糧にし、安全な社会の実現を目指していきたいと思う」と強調した。
真菜は愛を、莉子は命の尊さを教えてくれた
失った家族との思い出を「娘が生まれた日。小さな手が私の指を握り返してくれた感触。そして、その手が冷たく固くなってしまった日の感触─。どちらも生涯忘れない。真菜は愛を、莉子は命の尊さを教えてくれた」ともつづり、「交通事故、社会のみんなの力で無くしていきましょう」と結んだ。