第77回都民の消防官表彰式が27日に行われるのを前に、受章が決まった5氏の経歴などを紹介する。
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火災を未然に防ぐ予防業務に従事して、まもなく36年。都民の尊い命と財産を守るため、火災発生前のあらゆる現場に出動し、防火・防災の重要性を説いてきた。
「地域の方に、もっと防火管理について分かってもらいたい」と、これまで着任した7つの消防署では、積極的に管内の住民や事業所職員と交流。直接、消火器の使い方を指導したり、防火管理講習の積極的受講を呼びかけたりして、地域の防火体制を強固なものとしてきた。
活動の根底にあるのは、「何かあったときに助け合える仲間を増やしたい」という思い。地道な声かけは、人々の防火意識の改革につながっている。
平成29年には、小石川消防署管内の飲食店などを巡回し、事業所形態に合った防火管理対策を的確に助言したことで、防火管理者の早期選任や、自衛消防訓練の実施を報告する届け出率の向上に貢献。防火管理係予防部長賞を授与された。
消防士としては珍しい、理系の短期大学出身。2年間、電気科でプログラミング技術などを学んだ。周りの学生はIT企業などに就職する中、「人の助けになっていることが、目に見えて分かる仕事がしたい」と大学の掲示板に貼ってあった東京消防庁のポスターを偶然見つけ、採用試験の受験を決意した。
学生時代に得たプログラミングの知識は、入庁後も決して無駄にはしなかった。平成14年、赤羽署で、管内の火災発生状況などが分かるホームページの立ち上げに尽力。さらには、防火啓発パンフレットやイベントポスターの作成なども主導し、同庁の広報活動を支えてきた。
これまでの歩みを振り返り、出てきた言葉は「全部楽しかった」。どんなときも、持ち前の明るさと優しい笑顔は絶やさなかった。
また、「入庁してからずっと人に恵まれている」と、活躍を後押しし続けてくれた上司や仲間への感謝を忘れない。
「今度は自分が後輩に見せる番」と、地域の防火広報活動を重んじる姿勢を後輩たちに受け継いでいく覚悟だ。(塚脇亮太)
すずき・よしこ
国分寺市出身。平成元年入庁。東京消防庁入庁後は7つの署などで勤務し、令和5年から練馬署予防課防火管理係。短大で出会った夫との間に3男。息子3人はいずれも元高校球児で、週末は応援でよく声をからしていた。趣味は映画鑑賞。