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ロス疑惑 「劇場型事件」を象徴 警視庁150年 70/150

産経ニュース 2024年8月27日 7時0分

1980年代は犯罪が社会の注目のもとに進む「劇場型事件」の季節だった。その象徴ともいえるのが「ロス疑惑」だろう。

事件は〝文春砲〟によって始まった。週刊文春は昭和59年1月から「疑惑の銃弾」と題して、会社社長の三浦和義=当時(36)=が保険金などを目的に妻や交際相手の殺害に関与した疑いがあると報道した。

三浦は米ロサンゼルスで妻が銃撃され、死亡したことで「悲劇の夫」と同情を集めていた。疑惑を否定する三浦への報道は過熱。追及する米ロス市警のジミー佐古田捜査官ら〝脇役〟も騒ぎに花を添えた。

国外で発生した事件でも、凶悪犯罪は日本の当局が捜査できるため、警視庁捜査1課が捜査に乗り出した。のちにオウム真理教事件の捜査を指揮し、「名課長」とうたわれた寺尾正大を担当管理官に充て、60年と63年にかけて三浦を逮捕する。三浦は銃撃前の妻への殴打で実刑判決を受けるも、銃撃については2審で逆転無罪判決が下り、平成15年に確定した。

しかし、事件はそれでは終わらなかった。その5年後、ロス市警は米自治領サイパンで、三浦を1981年の妻殺害に関与した殺人と共謀の容疑で逮捕した。

一度無罪が確定した事件を罪に問わない「一事不再理」との関係などから物議を醸す中、収容先のロス市警拘置所で三浦はTシャツで首をつって死亡した状態で見つかる。誰もが予想できなかった、劇場型事件の幕切れだった。(内田優作)

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