インターネットで偽の通販サイトを利用した被害者が、犯人側に指示されるままに商品の代金、電子マネー、現金を3重にだまし取られる「欠品・返金詐欺」の被害が相次いでいる。警視庁には今年に入ってから138件、計約1億5千万円の被害申告が寄せられているといい、警察や国民生活センターが警戒を呼びかけている。
通販サイト装う
《先日ご購入いただいた商品は一時的に欠品しております》
警視庁によると今年5月、通販サイトでアイドルの交流イベントのチケットを購入した40代女性に、こんなメールが届いた。女性は文面に従い、支払ったチケット代1万5千円の返金を受けようと、業者を名乗る人物とLINE(ライン)で、やり取りを始めた。
業者がスマートフォン決済アプリ「PayPay(ペイペイ)」で返金すると説明したため、女性は業者と通話しながら、ペイペイで「認証コード」と称する数字などを入力。すると知らない間に電子マネー約25万円を送金させられていた。
業者はその後も「エラーで返金できない」などと、今度はインターネットバンキングのサイトに誘導。指示通りに操作した女性の口座から計980万円が送金された。女性は警視庁に対し「指示通りやればお金が返ってくると思っていた」と話しているという。
年齢、性別関係なく
警視庁捜査2課によると、こうした欠品や返金を装う詐欺被害は令和5年ごろから確認されるようになり、最近になって急増。被害者の年齢層は10~70代と幅広く、性別に関係なく被害が拡大しているという。
被害のポイントは偽の通販サイトだ。アマゾンのような大手サイトを装うものではなく、個人や小規模事業者を装い、書籍や洋服、楽器、フィギュア、DVDなどの販売を扱うものが確認されている。他のサイトよりも格段に安いなどの特徴があるという。
国民生活センターにも被害相談が多く寄せられている。センターによると、詐欺サイトは、①ブランド品やメーカー品などが市場価格より極端に安い②不自然な日本語表記③サイト内に返品のルールや事業者の情報が記載されていない-などの特徴がある。業者とのやり取りが発生してしまった場合について、担当者は「相手から『○○ペイで返金します』という言葉が出たら、まず詐欺を疑い、当センターや警察に相談してほしい」と呼びかけている。(外崎晃彦)