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増加に転じた子供の性犯罪被害 「日本版DBS」導入決定も さらなる対策急務

産経ニュース 2024年7月21日 11時0分

18歳未満が被害者となった性犯罪の摘発件数が昨年、4418件に上ったことが警察庁のまとめで分かった。3年連続の減少から増加に転じ、令和元年(4504件)に迫る水準。子供と接する職場で働く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」制度の創設を盛り込んだ新法が今年6月に成立する中、被害防止に向けてさらなる対策は急務だ。

不同意性交など増加

警察庁によると、昨年摘発された18歳未満が被害者となった性犯罪のうち、児童買春や青少年保護育成条例違反(みだらな性行為)、児童福祉法違反(淫行)は前年の令和4年から減少。ただ、不同意性交(旧・強制性交)が709件(前年474件)、不同意わいせつ(旧・強制わいせつ)が1694件(同1464件)と、それぞれ増加している。

今年に入っても、東京・歌舞伎町の通称「トー横」に家出をしてきた小学6年の少女にわいせつな行為をしたとして、自称「トー横の元帝王」の20代の男が6月4日、不同意性交の疑いで警視庁に逮捕される事件が起きた。

歌舞伎町周辺に集まる「トー横キッズ」と呼ばれる少女たちに「泊まるところがある」と声をかけて誘う手口を繰り返していたとみられ、警察関係者は「歓楽街、教育現場、交流サイト(SNS)上と、危険はどこにでも存在することを大人が子供にしっかり教える必要がある」と警鐘を鳴らす。

相次ぐ盗撮

性交などの直接的な行為を伴わない間接被害も後を絶たない。

昨年摘発された18歳未満が被害者の性犯罪では、いわゆる「児童ポルノ」が2789件にのぼった。内訳は「製造」が1514件、「所持」が499件、「提供(販売や公然陳列)」は776件となっている。

これまで自治体の迷惑防止条例で禁止されていた盗撮行為を取り締まるため、法改正により5年7月から施行された「性的姿態撮影罪」での摘発は539件。同じく同月から施行された、16歳未満に対しわいせつ目的で金銭を渡すなどして会うことを求めたり性的画像を撮影・送信させたりすることを求める「面会要求罪」は19件だった。

新法の効果は

こうした被害を防ぐことを目的に今年6月に創設されたのが、教育現場などで働く人の性犯罪歴を雇用主が政府に確認し、犯歴があった場合に就労を制限することを盛り込んだ「こども性暴力防止法」だ。

制度のモデルとした英国の機関の頭文字をとって「日本版DBS」と呼ばれ、令和8年度をめどに施行される。学校や保育所の制度参加が義務づけられているが、学習塾など民間事業者の参加が任意にとどまる。

昨年には中学受験塾「四谷大塚」の元講師の男が教え子の女児12人の下着を校舎内で盗撮し画像や女児の氏名、住所を小児性愛者のグループチャットへ送信するなどした事件が発生。性的姿態撮影処罰法違反や個人情報保護法違反などの罪に問われ、今年3月に東京地裁で懲役2年、保護観察付き執行猶予5年の有罪判決が言い渡された。

ある学校関係者は、日本版DBSについて「子供を守るための大きな一歩だ」と評価する一方、「事件が増えている実態を踏まえると、もっと踏み込んだ制度にブラッシュアップさせる必要がある。塾などへの義務化の是非も早急に議論すべきだ」としている。

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