裁判官出身で最高裁から金融庁に出向中だった男性職員によるインサイダー取引事件で、公表前の株式公開買い付け(TOB)情報を基に株取引をしたとして、東京地検特捜部は25日、金融商品取引法違反の罪で、元裁判官の佐藤壮一郎被告(32)を在宅起訴した。特捜部は同日、別のインサイダー取引を巡り、東京証券取引所元職員、細道慶斗被告(26)と父親で会社役員の正人被告(58)を同法違反罪で在宅起訴した。
佐藤被告、慶斗被告ともTOB情報を企業側から事前に提供され、審査・確認する立場。公正な資本市場形成を担う官民の「市場の番人」側の不正が同時期に刑事責任を問われる異例の事態となった。
証券取引等監視委員会が23日、3人を特捜部に刑事告発。同日付で佐藤被告は金融庁から懲戒免職、慶斗被告は東証から懲戒解雇されていた。
佐藤被告の起訴状によると4~9月、所属していた金融庁企業開示課で得たTOB情報を基に、本人名義で10銘柄、計約1万1800株を約950万円で買い付けたとしている。
関係者によると、佐藤被告はこの取引で少なくとも数百万円の利益を得ていた。
裁判官だった佐藤被告は4月、最高裁から金融庁に出向。TOBの事前審査を担う関東財務局などに開示内容を指導する担当だった。
一方、慶斗被告の起訴状は1~4月、所属していた東証開示業務室で得たTOB情報を正人被告に伝達し、正人被告が関連する3銘柄1万5200株を約1700万円で買い付けたとしてる。