《10月23日を最後にアカウント主、つまり私の妹と連絡がつかなくなりました》。平成29年10月26日、東京都八王子市の女性=当時(23)=のツイッター(現X)アカウントにそう書き込まれた。女性は前月に「パッと死んでパッといなくなりたい」と投稿したのを最後に失跡。兄から捜索願を受けた警視庁高尾署のある幹部は事件性を見抜き、捜査を始める。
兄による26日の投稿を、別の女性が目にした。この女性は、以前に自身が会った男と失跡女性が会ったとされる者が同一ではないかと疑う。警視庁の捜査員らが、申し出た女性の協力で男を都内の駅まで呼び出し、尾行。30日午後4時ごろ、捜査員は男の神奈川県座間市のアパート居室に踏み込んだ。男が玄関のクーラーボックスを開けると、切断された人の頭部があった。
男は白石隆浩死刑囚(34)=強盗・強制性交殺人罪などで判決確定。金とわいせつ目的で「首吊り士」などと称してツイッターで自殺願望を持つ人などを誘い出し、同年8月から男女9人を殺害していた。
事件は自殺願望を持つ人へのケアや、SNS上の犯罪対策など重い課題を浮き彫りにした。国はSNSの運営者などには自殺に誘うような投稿の削除を求め、自殺関連の語句を検索した人には支援窓口の連絡先を表示。行政機関や民間団体もネットパトロールを行うなど、危険を事前に察知し助けを求める人の支援を進めている。
また、警視庁は事件に巻き込まれた可能性のある「特異行方不明者」の捜査に捜査1課特殊班の一部を組み込むなど、事件を見逃さない取り組みも強化している。(内田優作)