近畿2府4県の優秀な警察官をたたえる第138回「近畿の警察官」(産経新聞社提唱、近畿地区信用金庫協会、富国生命保険相互会社協賛)に、奈良県内からは県警捜査1課の福岡貴(たかし)警部補(50)が選ばれた。勤続31年余りのうち23年以上を刑事部門で過ごし、重大事件の解決に尽力。「被害者の無念を晴らす」という熱い思いで捜査に当たっている。表彰式は27日、大阪・上本町の大阪国際交流センターで行われる。
奈良県橿原市出身。消防士だった父を見て育つ中で「公に貢献する仕事をしたい」と思うようになった。「県民を守る仕事といえば警察官」と考え、県立高校卒業後の平成5年4月、県警に採用された。
最初に配属されたのは高田署の近鉄高田駅前派出所(現・同交番)。このころ「地域警察官では深い捜査ができない。捜査の最後まで事件に関われ、深い捜査ができる刑事になろうと思った」と振り返る。
10年3月からほぼ2年間、県警自動車警ら隊員として勤務。このときは、近畿2府4県の警察官で構成する近畿管区機動隊の隊員としても活動し、国内各地で警備に当たった。年2回、堺市の近畿管区警察学校で1回あたり20日ほどの訓練があった。厳しい指導が行われ、盾やヘルメットなどの装備を身に着けてグラウンドを走るのがつらかったが、「粘り強い捜査につながる忍耐力がついた」と感じている。
その後は、念願だった刑事部門へ。連続放火や児童暴行死など数々の事件に携わってきた。
印象に残っているのは、28年に奈良県川上村の山林でポリ袋がかぶせられた遺体が見つかった殺人死体遺棄事件だ。マスコミの注目を集める中、腐敗が進んだ遺体の身元特定は難航した。歯の状態を示す遺体のデンタルチャートを持って県内各地の歯科医院を回ったが、身元にたどりつかなかった。
次に遺体の義歯から特定しようと試み、義歯の写真などを持って県内外の義歯製造業者を巡り、そこで製造されたものかどうか確認した。その結果、「うちでつくったかもしれない」という業者に別の捜査員が行きついた。そこから義歯が納品された歯科医院がわかり、遺体の身元が判明した。
「地道な捜査だった。まず身元が分からなければ、事件の背景もわからない」と話す。身元が特定されたことで捜査が進展し、被害男性の妻と長女が逮捕された。
やりがいを感じるのは、容疑者を捕まえて被害者から「ありがとうございます」と言われたときだ。「被害者が一番望んでいるのは被害に遭う前の状態だが、それはできない。だが、犯人を捕まえ、できる限りのことをしてあげることで、被害者の無念を晴らす」と思いを語り、「体力が続く限り、現場の捜査員としてやっていきたい」と力を込めた。