「警察を呼んでください」。平成15年7月、首相官邸にもほど近い東京・赤坂の短期賃貸マンションから、はだしで逃げ出してきた小学6年生の女子児童が近くの生花店に助けを求めた。マンションに駆け付けた警視庁赤坂署員が室内で女子児童3人とリビングで死亡していた男=当時(29)=を発見した。
自ら命を絶ったのは、デートクラブ「プチエンジェル」の社長と名乗っていた男。児童に渡したチラシには「カラオケ30分…5千円/下着…1万円/裸の写真…1万円」という〝値段表〟が記載されていた。
児童4人のうち1人は事件前、渋谷のファッションビル「109」の前で、高校生くらいの女性に「一緒にカラオケに行ってくれれば、お金をあげる」と声を掛けられ、男を紹介されたという。男は児童らを脅し、足に手錠を掛けてポリタンクなどにつなぎ、4日間にわたり監禁した。
「渋谷でチラシを配って少女を集め、売春させている男がいる」。事件前、渋谷でそうした噂が広まっていた。警視庁はチラシの携帯電話の番号などから男を割り出し、被害に遭った少女から話を聞くなど内偵捜査を始めていた矢先だった。
監禁場所のマンションからは20数人分の少女の名前や住所、年齢、身長や体重、愛称などが書かれた「少女面接帳」も押収された。中学生以下の少女を男性客に斡旋(あっせん)していた疑いが浮上したが、男の死亡により真相は闇の中だ。事件当時に比べて交流サイト(SNS)が急速に発展した現在、少女を狙う卑劣な大人の犯行はより見えづらく形を変え、今も続いている。(梶原龍)