平成8年9月9日夕、東京都葛飾区柴又の閑静な住宅街にある住宅から煙が出ているのを近くの住民が発見し、119番通報した。自宅2階で、布団をかけられて死亡していた上智大4年の小林順子さん=当時(21)=が見つかった。自宅に1人でいた順子さんは、口や手首に粘着テープが貼られ、小型の刃物で首などを刺されて殺害されていた。
警視庁は放火殺人事件として亀有署に捜査本部を設置。寺尾正大捜査1課長は会見で「順子さんに変なうわさはない。ストーカーなるものが存在するのかどうか」と語った。当時、まだ日本ではなじみがなく、欧米で研究が進んでいた「ストーカー」による犯行説も有力視された。
現場で犯人は出血しており、血液型がA型で、DNA型も判明したが、特定には至っていない。出火前には現場近くで、身長150~160センチほどで黒っぽいズボン、黄土色のコートを着た不審人物も確認されている。
事件の2日後には念願だった米国留学に向けて出発する予定だった順子さん。父の小林賢二さんは、ほかの殺人事件の被害者遺族と「宙(そら)の会」を結成し、国に時効撤廃を求める嘆願書と約4万5千人分の署名を提出。22年4月に時効撤廃が決まったが、事件は未解決のまま28年が過ぎた。
今年9月9日に行われた献花式で賢二さんは「こんなに未解決が続くと思っていなかった。目撃情報が捜査の宝」と捜査への協力を呼びかけた。情報提供は亀有署捜査本部(03・3607・0110)まで。(前島沙紀)