令和5年1月に大阪湾で死んだクジラの処理費が当初見積もりの2倍以上となる約8千万円に膨らんだ問題を巡り、大阪市の外部監察専門委員は30日、業者との交渉で最大約1400万円を減額できる余地があったとする調査報告を公表した。市職員と業者による会食などは不適正だったと指摘した一方、処理作業に関する資料が不足し、市の損害として認定することは困難と結論付けた。
外部監察専門委員は、8人の弁護士で構成。昨年6月に横山英幸市長が調査を委託し、クジラの処理を巡る業者選定から随意契約に至るまでの経緯の妥当性や、大阪港湾局のガバナンス(組織統治)などについて検討していた。
報告書では処理費用の積算について、死骸を海に沈め帰港するまでの作業費や船体の清掃費などの交渉で減額の余地があったと指摘。一方で、作業に関する資料が不足しており、詳細な実績を裏付けられず「大阪市の損害と認めるのは困難」と結論付けた。委託業者の選定についても「恣意(しい)性があったとまでは断定できない」とした。
また職員と委託業者らとの会食や酒類の提供については「不適正」と指摘。大阪港湾局のガバナンスが機能していなかったとし、事務マニュアルの順守を求めた一方、同局と委託業者との組織的な関係性については「特段の問題は見受けられなかった」としている。
外部監察専門委員を務めた山形康郎弁護士は「組織として動く際に、問題への対処の方向付けが担当者任せとなっていた」と指摘。「未知の事象が発生した場合は、各部署で連携しながら対応すべきだ」とした。
大阪市の横山英幸市長は、この日の定例会見で「報告書で指摘を受けた点について再発防止やガバナンスの強化、コンプライアンス(法令順守)の徹底に改めて取り組みたい」と述べた。(石橋明日佳、写真も)