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加熱不足疑い牛レバー返礼品に 大分・中津ふるさと納税、別の同社製品で問題も扱い継続

産経ニュース 2024年11月24日 18時11分

牛レバーを基準通りに加熱処理せず「まるで牛レバ刺し」などと称して製造・販売したとして、食品衛生法違反の疑いで大分県中津市の食肉加工会社の社長らが京都府警に逮捕された。「法律の通り加熱している」などと容疑を否認するが、工場では基準を大幅に下回る温度設定の加熱器が見つかった。同社を巡っては鶏レバーで体調不良者が相次ぎながら、地元の中津市がふるさと納税の返礼品に牛レバーを扱い続けており、専門家は市の対応を疑問視する。

1億円売り上げの人気商品

《生レバーの風味をそのまま再現した画期的なハム加工商品です》

20日に逮捕された枡田治基(ますだ・はるき)容疑者(66)が社長を務める食肉加工会社「Meフードシステム」のホームページ。「牛レバーハム」(税込み819円)について、加熱による安全性とともにこうアピールする。府警によると、昨年度は約32万個(約1億円)を売り上げる人気商品で、全国各地に出荷された。

牛レバーは過去の集団食中毒事件をきっかけに食品衛生法の規格基準が改正され、平成24年7月から生食が禁止に。一方で加熱用の販売・提供は認められ、その場合は中心部を63度で30分以上加熱することなどを加工業者に義務づけている。

ふるさと納税返礼品に

府警は今年1月、「京都市伏見区の飲食チェーンで生レバーが提供されている」との情報提供を受けて捜査。肉を鑑定した結果、加熱処理のない「生肉」と判断された。枡田容疑者は逮捕後も容疑を否認しているが、同社の工場では「47度で40分間」に設定された加熱器が見つかった。肉は約50~60度で変色するといい、捜査幹部は「見た目が変わらないギリギリの温度を狙って加熱していたのでは」と話す。

同社の商品は地元の中津市も令和2年からふるさと納税の返礼品として採用しており、20日の逮捕の一報とともに対応に追われた。市は同社商品を返礼品のサイトから全て削除するとともに、受け付けも停止した。

専門家「むしろ微生物増殖」

ただ、同社製品を巡っては昨年以降、問題が相次いでいた。大分県によると、昨年6月に同社の「鶏レバーハム」を食べた消費者が体調不良を訴え、保健所の調査でサルモネラ属菌と糞便系大腸菌群を検出。回収命令などを出した。今年7月にも鶏レバーハムを食べた人が体調不良を訴え、再び回収命令を出した。

中津市によると、鶏レバーはふるさと納税の返礼品に含まれていなかったという。市の担当者は「鶏レバーの問題は把握していたが、牛レバーは命令の対象外だったので扱い続けた。(対応が)適切かどうか個人では回答できない」と語った。

牛レバーの加熱について、近畿大の芦田久教授(食品微生物)は「業者は生食感を出そうと47度で加熱したのかもしれないが、47度では殺菌にならず、むしろ微生物が増殖する可能性がある」と指摘。鶏レバーの問題後も返礼品に牛レバーを扱い続けた市の対応には「安全性を考えれば、牛レバーも(返礼品から)外すべきだったのではないか」と述べた。

「あかんやつ」販売、経営者逮捕も

牛レバーの生食が食品衛生法で禁じられたのは平成23年、焼き肉チェーン店で腸管出血性大腸菌O(オー)111に汚染された牛のユッケを食べた5人が死亡した集団食中毒事件がきっかけだ。ただ、生レバーを求める消費者もおり、水面下で提供する飲食店が後を絶たない。

厚生労働省は集団食中毒事件の後、ユッケについては表面を加熱するなどの規格基準を設定。一方で生レバーは加熱以外に肝臓内部の殺菌が不可能なため、24年7月から提供が禁止された。

一方で生レバーは根強い人気があり、その後も一部の飲食店で「裏メニュー」などとして提供。経営者らが摘発される事件が相次いでいる。

30年10月、客に加熱を指示せず生レバーを提供した疑いで、京都市内の焼き肉店経営者が逮捕された。店ではメニューに「あかんやつ」と表記して販売していたという。

令和元年9月にも、常連客らに生レバーを提供したとして、大阪府摂津市の居酒屋経営者が書類送検された。「お客さんの要望で(生レバーの)提供を始めた」などと供述していた。(堀口明里)

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