Infoseek 楽天

警察庁長官銃撃の衝撃 容疑者浮上するも決め手なく時効に 警視庁150年 98/150

産経ニュース 2024年10月28日 8時0分

「長官が撃たれた」

地下鉄サリン事件から10日後の平成7年3月30日、オウム真理教に対する追及を強めていた警察当局に激震が走った。当時の国松孝次警察庁長官が東京都荒川区南千住の自宅マンション前で、出勤のための迎えの車に乗り込もうとしたところを柱の陰から狙撃された。

使用された銃は米コルト社製の38口径回転式「パイソン」で、弾は殺傷力が高いホローポイント型マグナム弾。発射された4発のうち3発が腹部、大腿部(だいたいぶ)、臀部に命中し、重傷を負った。

警視庁は公安部が捜査を主導した。8年5月、警視庁の現職警察官でオウム信者だった元巡査長が公安部の調べに、「自分が撃った」と話し、教団の関与を供述。警視庁は拳銃を捨てたとする神田川を捜索するが発見には至らなかった。

この時は立件が見送られたが、元巡査長が自供していることを当時の公安部長が警察庁に報告していなかったことなどから、捜査を指揮する公安部長が更迭され、警視庁トップの警視総監も引責辞任に追い込まれた。

発生から9年以上経過した16年7月、警視庁は元巡査長や元教団幹部4人を逮捕するが、供述は二転三転し、全員が不起訴処分となった。

20年には現金輸送車襲撃事件などで勾留されていた男が、捜査1課の調べに対し、長官銃撃への関与を「自白」。パイソンを米国で購入した形跡があったが、立件には至らなかった。男は今年、医療刑務所で死亡した。

平成22年、事件は犯人不明のまま公訴時効を迎えた。当時の公安部長が記者会見し、オウム信者による犯行だとする捜査結果を公表したが、時効となった事件で犯行組織を名指しする対応には批判も出た。教団主流派「アレフ」から名誉毀損(きそん)で訴えを起こされ、東京都側の敗訴が確定した。

警察トップが襲撃されるという前代未聞の事件に警視庁は延べ約48万人の捜査員を動員。「威信をかけた捜査」を展開したが、深層は闇のまま、終焉(しゅうえん)を迎えた。(橋本昌宗)

この記事の関連ニュース