かつて「荒れる成人式」として話題になった沖縄県の多くの自治体で12日、「成人の日」の式典が行われた。県は「さまざまな取り組みが奏功し、近年は落ち着いている」(担当者)とみているが、沖縄市の式典会場ではこの日、改造車やバイクの爆音が鳴り響く一幕もあった。全体から見ればごく少数ながら、奇抜な髪形や衣装が目を引く〝やんちゃ〟な若者は今も健在のようだ。
沖縄市の式典会場はバスケットボールの聖地といわれる「沖縄アリーナ」。午後1時15分ごろ、華やかな振り袖や羽織袴(はかま)に身を包んだ若者が一斉に振り返った。視線の先は車線をまたいで蛇行する2人乗りの改造バイク。派手な装飾を施した車も続いた。
県警沖縄署は会場前の道路で片側2車線のうち1車線を規制。「改造車は走行させない。会場の敷地にも入れない」(同署幹部)と厳戒態勢を敷いており、会場前はパトカーや白バイのサイレンが鳴り響き、一時騒然となった。
「琉球 成人記念」といった刺繍を施したピンク色の袴を来た男性に声をかけると、「暴走はしていません」と一言。式典の静謐(せいひつ)な雰囲気を壊してはいけないと、わきまえているようであった。
午後2時から始まった式典は特に混乱もなく、粛々と行われた。病気療養中に亡くなった桑江朝千夫市長の職務代理者、平田嗣巳副市長が「皆さんの可能性は無限に広がっている」とあいさつ。玉城デニー知事は「よりよい沖縄の未来のために、共に頑張っていこう」とのメッセージを寄せた。
沖縄県は10年以上前から貸衣装会社や自動車整備、レンタカーなどの関連団体に、「迷惑行為が及ばないよう、不穏な動きがあれば通報するようお願いする文書」(県担当者)を送付。那覇市では中学校単位で時間をずらして開始する「分散化」を進めた。県警も教育委員会を交え対策を講じてきた。こうした取り組みの甲斐もあり「荒れる成人式」は、今は昔の光景になったとされる。
沖縄市の式典に出席した赤嶺夢亜さん(20)は「最近は静かになった。これも時代だと思う」と語り、「立派な大人になりたい」と力を込めた。
県によると、12日は県内41市町村のうち21市町村で式典を実施。新成人を迎える県内の18歳人口は1万6485人で、式典の対象となる20歳は1万5707人だった。(大竹直樹)