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家に108本の白バラも…1 千万円だまし取られた女性「気づけばファンになっていた」

産経ニュース 2024年7月25日 20時28分

奈良県内で交流サイト(SNS)を悪用した投資詐欺や、恋愛感情を抱かせて金をだまし取るロマンス詐欺の被害が相次いでいる。ロマンス詐欺で現金1千万円以上をだまし取られた同県平群町の50代女性がインタビューに応じ、「絶対に引っかからないと思っていたが本当に巧妙だった」と手口を振り返った。

《この写真はどこで撮りましたか》。今年4月ごろ、女性のインスタグラムに女性が投稿していた風景写真に対する質問が届いた。

送り主のプロフィールは40代男性と書かれていたが、投稿されていた写真を見る限りでは30代にも感じた。返信すると、たどたどしい日本語の文章が返ってきた。女性は「50歳も過ぎていますが、それでも良かったらお話しくらいは」と応じてやりとりが始まった。

相手は日本生まれの母と外国生まれの父のハーフで、兵庫県明石市で貿易関係の企業の役員を務めていると説明した。女性はLINEの登録を促され、やりとりはLINE上で続いた。送られてくるのは、モデルのように街を歩いたり豪華な食事をしていたりと、セレブのような写真や動画だった。

《気にかけてくれてありがとう》《君が愛しい》《愛している》-。最初は1日1回くらいでやりとりしていたが、次第にその優しい言葉に魅了されるようになっていった。「気付けばファンのようになっていた。リアルでないから、ここまで感情が揺さぶられたのかもしれない」と女性は振り返る。

最初の連絡から3週間ほど経過したころ、やりとりに変化が生まれてきた。《ブランド品に興味はありますか?》。女性がブランド品より車が好きだと答えたところ、《お金を考えずに好きなものを自由に買える生活が良くないですか?》と返事があった。続けざまに「日本国も推奨している運用」だとして、資産運用を持ちかけてきた。

女性は案内されたアプリをインストールし、言われるがままに10万円を預けた。数日後、アプリを確認すると、画面に表示された金額は数万円増えていた。「もし100万円投資したら…」。実態はアプリ上で偽の金額が表示されているだけだったが、完全に信じ込んでいた。

たたみかけるように、《モデルルームを見てきた》《どういう庭にしたいですか》など、2人で生活することを匂わせるような連絡も届くようになり、自宅に108本の白いバラが贈られてきたこともあった。

その後も数十秒という短時間での取引を勧められ、持ち金をつぎ込んだ。アプリ上の資金は数十万円単位で増えていったが、気が付くと貯金だけでなくクレジットのキャッシング枠なども使って、1千万円以上をつぎ込んでいた。

詐欺だと気付いたのは5月下旬。出金しようと申請したところ、いつまでたっても引き出せなかった。友達に相談したところ詐欺だと指摘され、県警に届け出た。

「マニュアルがあるのだと思うが、中年以上の女性が求める言葉を全部研究している感じだった」。言葉巧みに恋愛感情を刺激する巧妙な詐欺の手口を女性はこう振り返る。一度信じてしまうと抜け出すのは難しいことから、被害に遭わないために「SNSで知らない人からメッセージが来たら、どんなに良い言葉だったとしても断って」と強調した。

奈良県警によると、1~5月のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は前年同期比116件増の126件、被害金額は同約14億1390万円増の約16億2570万円と、ともに急増している。県警は「インスタグラムやフェイスブックでのうまい話は詐欺を疑って」と注意を呼びかけている。

内訳は、投資詐欺が85件で約9億210万円、ロマンス詐欺が41件で約7億2350万円。5月のみの認知件数でも、投資詐欺が10件、ロマンス詐欺も10件にのぼった。被害者のうち約60%が65歳未満だった。

一方、従来の特殊詐欺の認知件数は前年同期比6件減の96件で、被害総額は同約4010万円増の約3億3240万円だった。最も多かったのが還付金詐欺で44件、次いで架空料金請求詐欺で22件。交付手段は、振り込みが63件、電子マネーが15件、キャッシュカード手交・窃取が14件だった。(秋山紀浩)

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