大阪市のクジラ処理費問題を受け、大阪港湾局が3日公表した契約手続きに関する調査報告書で不適切な行為が明らかになった。高額接待など悪質な事案は含まれていないものの、ガバナンス(組織統治)に疑問符が付く結果といえ、問題の全容解明とともに再発防止を徹底できるかどうかが問われる。
「会食やパーティー」17件
「契約事務は公平性、公正性、透明性。市民から疑義を招かないことが重要だ。1件でもあったら不適切は不適切。あってはならない」
報告書の公表を受け、横山英幸市長は記者団にこう強調し、再発防止を徹底する考えを示した。
今回の報告書は、令和4年4月から6年7月までの契約手続きに関し、市の契約マニュアルに違反するなどの不適切行為が計29件あったとしている。
マニュアルが禁止する行為は20項目あり、今回確認された不適切行為は3項目で計28件。内訳は入札参加資格を有する関係業者などとの間での①「贈答品の受領」6件②「事務用品の受領」5件③「会食やパーティー」17件-だった。
①は元市職員からイベント時の差し入れで菓子を受け取るといった内容で、②は業者から扇子やカレンダーを受け取るなどした。③では市主催イベントの参加者らと懇親会を行ったり、新年会などの出席について案件ごとに上司の了承を得ていなかったりした。該当する課長級以上の幹部は①7人②3人③5人-だった。
残りの1件は、クジラ処理に際して委託事業者の窓口となった元市職員に日本酒を贈った事案。マニュアルに違反しないものの疑惑を与える可能性があるとされた。
大阪港湾局は「他局と比べて会食などが多い部分もある」とする一方、「(組織内で)マニュアルの認識があまりなく、ルール違反になった分が29件ある。マニュアルの周知が徹底できていなかった」と釈明した。
大阪港湾局は今回の問題を受けて職員行動指針を改定。①事実と根拠(ルール)を確認②まずは、一報を共有③緊張感をもって仕事に臨む-とした。指針順守にあたっては、公費を扱う組織としての意識改革が求められる。
自公追及へ「調査甘い」
大阪港湾局が調査報告書を公表したことを受け、大阪市議会では公明党や自民党などが徹底追及の構えをみせる。地域政党「大阪維新の会」が過半数の議席を占める中で、どこまで議論を深められるかが焦点になりそうだ。
「大阪港湾局の甘さや緩さといった体質が露呈した」。公明市議は報告書をこう批判した。
調査では令和4年4月以降、契約マニュアルに反するなどの不適切行為が29件確認された。同局は「他局と比べて事業者との意見交換や会合が多い」と釈明したが、公明市議は「そもそも内規があり、こんなばかげた話はない」と切り捨てる。
大阪港湾局は大阪府と大阪市の港湾局が令和2年に統合。集荷を軸に国際競争力を高めるため、大阪港(大阪市)と府営の港湾8港の管理業務を一元化した組織だ。
公明市議によると、府営の港は漁港が多く、集荷がメインの大阪港とは業務が異なる。「改革の名のもとで一緒になっただけ。組織のブラックボックス化に拍車がかかっている」と問題視する。
自民市議は「身内の調査なので甘く、不透明な部分が多い。外部監察専門委員の調査結果が(来年2月をめどに)公表されてからが本番だ」と手ぐすねを引く。公明市議は維新の動向を警戒しつつ「問題をうやむやにせず、港湾局全体の体質改善を促せるように徹底追及したい」と息巻いた。(清宮真一、石橋明日佳)