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選挙の要人警備「接触回避」は道半ば 安倍元首相銃撃から8日で2年 手荷物検査は浸透

産経ニュース 2024年7月6日 20時4分

令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件から8日で2年。警察当局は要人警護の在り方を見直し、選挙を中心に警備体制を強化してきた。聴衆の手荷物検査や金属探知機の導入を徹底し、主催者側とも連携を密にするが、触れ合いを重視する候補者の聴衆との接触回避など一部は実現していない。今年は選挙妨害事件も相次ぎ、次の国政選挙を見据えた体制の高度化が求められる。

厳戒の警備

「手荷物検査にご協力をお願いします」「金属探知機も失礼します」

東京都知事選期間中の6月29日夕、足立区の北千住駅前ロータリーでは、無所属現職の候補者の街頭演説を控え、陣営と警視庁の警察官が聴衆に呼び掛けていた。

現場では、演説場所から一定の距離を置いて柵で囲んだ聴衆用エリアが設けられ、手荷物検査と金属探知機の検査を受けて入ることができる。戸惑う聴衆もいたが、「警備の都合なので」と説明されると素直に従った。

周辺では制服や私服の多数の警察官が警戒。聴衆エリア外での通行を確保するため、「立ち止まらないでください」などとも呼びかけた。

こうした対応は現職候補者だけではない。6月24日、立川市の立川駅前で行われた無所属新人の演説に、立憲民主党の泉健太代表が応援に駆け付けた際も同様だった。

教訓生きるか

安倍氏が4年7月、奈良市の駅前で参院選候補者の応援演説中、背後から銃撃された事件を受け、警察庁は警護の基本事項を定めた「警護要則」を改定。都道府県警の警護計画を警察庁が事前審査し、修正を指示する仕組みを始めた。

ただ、5年4月、衆院補欠選挙の応援演説で和歌山市に入った岸田文雄首相に向けて爆発物が投げ込まれる事件が発生。警察庁は主催者の政党や陣営に対し、屋内会場での開催や聴衆との接触回避に加え、手荷物検査や金属探知機の導入といった協力を呼びかけた。警護対象者と聴衆の間に距離をとる対策も図る。

都知事選では聴衆との距離確保や手荷物検査などの協力を得られたが、候補者が演説後に聴衆に近づき握手などする場面は過去の選挙と同様だった。陣営関係者は「不特定多数に候補者の主張や人柄を伝えられるのが街頭演説。触れ合う機会は大切にしたい」と話す。

警察幹部は「候補者の行動を規制できない。聴衆に接近するなら、そこで最大限の安全確保をするしかない」と明かす。

新たな妨害

一方、4月の衆院補選では演説妨害や選挙カーの追尾といった事件も起きた。警察庁の露木康浩長官は4日の定例記者会見で、「自由妨害など選挙を取り巻く情勢の変化にも十分対応する必要がある」と述べた。

来年は参院選があり、全国の警察も対応を迫られる。大阪府警幹部は、安倍氏銃撃事件の犯人のような単独でテロ行為に及ぶ「ローンオフェンダー」に加え、新たな選挙妨害への対処が必要と指摘。「政党幹部や閣僚など要人に限定することなく、選挙の警備体制を従来以上に強化しなければならない」としている。(橋本昌宗、有川真理)

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