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コーヒー通じた被害者支援 バリスタの長男事故死、両親が企画「命の大切さ伝えたい」

産経ニュース 2024年7月24日 21時47分

「コーヒーがつなぐ思いを広めたい」-。5年前に交通事故で亡くなったバリスタの長男の思いを受け継ぎ、両親がコーヒーを通じた被害者支援を続けている。活動は徐々に若者たちにも浸透し、輪が広がっている。

「被害者遺族って泣いていたり、怒っていたりするイメージを持たれていて。犯罪被害者のイベントって暗くて行きたくないって思われがちなんですよね」。令和元年7月9日、仕事中に交通通事故で長男の深迫忍さん=当時(29)=を亡くした母の祥子さん(55)はそう話す。かつて事故や犯罪被害者の思いを伝えるイベントを企画した際には、施設側から告知はされないまま開催したこともあった。

祥子さんと夫の祐一さんは令和3年から忍さんの命日に合わせ、チャリティーイベント「コーヒーエイド」を開催。昨年と今年は東京・中野で開いた。バリスタのコーヒーを楽しむことができ、会場の一角には交通事故や事件などで亡くなった人の家族が記した約50枚のパネルを展示する。

今年は大学生ら約50人がボランティアとして参加。慶応大1年の奥田野乃さん(18)は昨年は地元熊本の高校で祥子さんらとコーヒーを作り文化祭で販売。進学で上京した今年はボランティアとして参加した。「コーヒーがきっかけで被害者の方々を知ってもらうのは命の大切さを知ってもらうことにつながると思う」と話す。

参加するコーヒー店も忍さんとつながる。忍さんがコーヒーの師匠という小井土雄太さん(29)は「忍さんはコーヒーに真剣に向き合っていた。人とのつながりや亡くなった人をしのびながらコーヒーを飲んでもらう。コーヒーが昔と今、未来をつないでいると思う」と話す。

コーヒーエイドの売り上げの一部は被害者支援センターなどに寄付される。「コーヒー好きが集まってくれる。やらなきゃいけないじゃなくて自ずと広がる。そういう形で命の大切さを伝えていきたい」。祥子さんはそう話した。(大渡美咲)

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