Infoseek 楽天

「旧紙幣はこれまで通り使えます」新紙幣便乗の詐欺に注意、前回刷新時は偽造も相次ぐ

産経ニュース 2024年7月17日 8時0分

20年ぶりとなる新紙幣の発行が始まって2週間。警察は便乗した犯罪の発生に警戒を強めている。東京都内では3月以降、「旧紙幣が使えなくなる」と噓を言われ、高齢者が計約1500万円をだまし取られる詐欺被害が発生。大阪府内でも新紙幣発行当日、不審な電話が確認された。警察庁の露木康浩長官は「従来の紙幣が使えなくなることはあり得ない」と強調している。

「古いお札も使えます。詐欺に気を付けてください」。16日、大阪市福島区の阪神野田駅前で、大阪府警福島署の署員らが新紙幣に伴う詐欺被害防止のチラシを配っていた。

新五千円札の裏面のデザインとして描かれた「野田の藤」(ノダフジ)由来の地とされる福島区。この日の啓発は駅前のフジ棚近くで行われ、同署の中江尊博(たかひろ)生活安全課長は「旧紙幣はこれまで通り使える。あやしいと思ったら相談して」と呼び掛けた。

警察が危機感を強めるのは、今後新紙幣に便乗した巧妙な詐欺の発生が想定されるからだ。

同署は具体的な詐欺の文言も検討。「手元にある旧紙幣は使えなくなる。係りの者が交換にいく」▽「国の施策で新紙幣が全国のATMで使えるか調査している。謝礼を支払うので、モニターとしてATM操作に協力してほしい」▽「タンス預金の税務調査が入る可能性がある。こちらで一時的に経費として預かる」-といったパターンで、チラシにも盛り込んだ。

府警によると、新紙幣発行日の3日には大阪市此花区の住民に「古いお札とキャッシュカードが使えなくなる。今から交換に行く」という不審な電話もかかり、府警は便乗詐欺とみている。

平成16年11月以来の新紙幣発行。前回の紙幣刷新の前には紙幣の偽造が相次いだ。

警察庁によると、偽造紙幣は16年、前年比約1・5倍の2万5858枚に及んだ。その後は大幅に減少し、令和4年には948枚と前年から半減。昨年は681枚の発見にとどまった。背景にはキャッシュレス化の広がりがあるとみられる。

現在では高性能プリンターなどで印刷された紙幣や海外で精巧に偽造され日本に持ち込まれた紙幣が発見されてはいるものの、今回の新紙幣には偽造防止のため世界初の「3Dホログラム」が採用されるなど高度な対策が施されていることから、偽造は極めて難しいとされる。

露木長官は6月の記者会見で、偽造紙幣の発見枚数について「世界的に見てかなり低い水準」と指摘。新紙幣については「極めて高度な偽造防止技術が施されている」とした上で「不審な紙幣を見つけた場合には、直ちに警察や日本銀行へ届け出を」と語った。(藤木祥平、鈴木文也)

この記事の関連ニュース