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性犯罪の刑法改正で「不同意」の相談増加 支援センター「抱え込まないで」

産経ニュース 2024年7月7日 19時49分

性犯罪に関する規定を見直す改正刑法などが昨年7月に施行され、まもなく1年となる。性暴力の実態に合わせて「強制性交罪」が「不同意性交罪」となり、突然襲われて同意しない意思を示せないケースなども処罰の対象となった。抜け穴がカバーされたことで、性犯罪に関する相談件数や認知件数は増加傾向にある。

■相談件数増加

「飲み会で酔っぱらった後にわいせつな行為をされた」「妊娠していないか不安」-。東京都内にある性暴力救援センター東京(SARC東京)には、さまざまな性被害相談が寄せられる。「昨年、不同意わいせつ罪などができたことでさらに相談件数が増加した印象がある」。コーディネーターはそう話す。

SARC東京と東京都が共同で運営するワンストップ支援センターでの性暴力被害に関係する延べ相談件数は、平成30年度には約4千件だったが、令和4年度は6千件を超えたという。

同意しない意思を尊重

昨年の改正刑法などでは性犯罪を成立させるための要件指定が、暴行や心神喪失などと定められていたものから«同意しない意思を形成、表明、全うすることのいずれかが難しい状態»となった。解釈によって罪が限定されてしまうことなく、判断のばらつきをなくした。

支援センターには、それまでの相談にはなかった性行為中に合意なくコンドームを外される行為についても相談が寄せられるようになった。性的部位や下着などを撮影した場合の「性的姿態撮影罪」なども新設されたことで、性行為中の撮影や盗撮に関する相談も増えたという。

見て見ぬふりせず

性被害は報復を恐れたり、自責の念に駆られたりし、一人で抱えるケースも少なくない。コーディネーターは「あなたは悪くない。ハードルが高いと思うが『助けて』と声をあげてほしい」と強調。その場に居合わせた第三者が見て見ぬふりをしない運動の広がりにも期待しているという。

相談は、発信地のワンストップ支援センターにつながる全国共通短縮ダイヤル(#8891)、SARC東京が24時間365日対応する性暴力救援ダイヤル(03・5577・3899)で受け付けている。

(前島沙紀)

■性被害者支援に携わる上谷さくら弁護士の話

刑法改正により「顔見知りから急に襲われる」といった、それまで男女トラブルと思われていたものが性犯罪と分かるようになった人が増えた。日本で希薄だった性犯罪に対する意識が高まったと思う。公訴時効延長により、時間がたっても被害を訴えてよいと気づく人も増えた。

一方、性教育などは相当改善する必要がある。被害者が苦しむ中で、網羅的に支援する制度がなく、性被害のカウンセリングをできる技術がある心理職の人や被害者支援の弁護士も少なく、人材育成が急務だ。加害者の再犯防止にも本腰を入れることで、被害が減るのではないか。

性犯罪は日常生活に密接に関係しているため、被害を防ぐために自分ができることをするというのは重要だ。電車内で痴漢を目撃したら、被害者に「何時ですか」などと話しかけて気をそらすということもできる。被害者の気持ちはそれぞれ。もし身近な人が被害に遭ったら「早く忘れた方がいい」などの自分の意見を押しつけず、被害者の言葉に耳を傾け、寄り添うことが大切だ。

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