埼玉県川口市に在留するトルコの少数民族クルド人について、法務省が「出稼ぎ」と断定する報告書を出していた問題で、浜田聡参院議員が16日、法務省からこの文書を入手し、公表した。固有名詞などは黒塗りされているが、現地のクルド人らが平然と「出稼ぎ」と述べるなど生々しいやり取りが記されている。
「御殿」指差し「大きくて立派」
報告書は平成16年6~7月、当時の法務省入国管理局(現・出入国在留管理庁)職員が訴訟対応のため行った現地調査の内容。産経新聞社が確認した文書と全く同一のものだった。
現地調査は、日本に在留するクルド人の出身地などで聞き取りしたものだが、現地の村人らは日本語を話し、親しげに近寄ってきたという。
特に難民申請者の多い村のうち、ある村では《複数の壮年男性たちが、当方に対し笑顔で、口々に日本語で「こんにちは」と声をかけてきた。男性は「日本行ったことある。川口にいた。日本の家はちっちゃい。僕の家、大きくて立派。中もきれい」などと得意げに述べ、一軒の家を指さした》。
《男性に「なぜみんな日本に行くのか。日本が好きなのか」と尋ねると、笑いながら、日本語で「好きも嫌いもない。お金稼ぐだけ」と答えた》
日本弁護士連合会は調査にトルコの憲兵隊(ジャンダルマ)を同行させたことなども問題視していたが、《ジャンダルマは特に当方に注意を払うこともなく、他の村人と雑談している様子であった》《小声で「ジャンダルマは怖い?」と尋ねると、にっこりと笑いながら右手を顔の前で左右に振りつつ「怖くない」と答えた》との記述もあった。
「難民」と言ったがだめだった
また、別の村の男性は《「あなたはなぜ日本に行ったのか」と尋ねると「金を稼ぐ。ほかに何がある。おれは1万6千ドルも借金して行った。もっと稼ぎたかったから『難民』と言った。でもだめだった」と述べた》という。
《「トルコに帰ったら危なかったのではないのか」と尋ねると、男性は相好を崩して笑い、右手を顔の前で大きく左右に振りながら「ない、ない。危なくない」「また日本に行きたい。だめか?」と述べた。…傍らにいた憲兵隊署長に対し「署長、あなただってきっと日本に行きたくなりますよ。すごい稼げるんですから」と述べた》
これらの村は、川口での難民申請者の8割が集中するトルコ南部3県にあり、3県のうちの地方自治体幹部は入管職員に対し、こう問いかけた。
《「それにしても、あなたがたは日本での裁判の立証のために証拠を収集する目的で来たとのことだが、わざわざここまで来なければならないような状況なのか。出稼ぎ者が噓をついて難民認定を受けようとするなどという話は、欧州ではすでにわかりきった話だ。日本ではまだそんな噓が通用しているのか」》