兵庫県たつの市の女児刺傷事件で逮捕された勝田州彦容疑者が、防犯カメラの位置を把握した上で犯行に及んでいた疑いが浮上した。カメラが少なかった当時の防犯環境の隙を突いた格好だが、その後カメラの設置台数は急増。現在は全国で500万台以上と推計されており、犯罪抑止のほか、犯人の足取りを追う捜査の主軸となっている。
たつの市によると、市内では記録が残る平成22年時点で、自治会が管轄する防犯カメラは1台のみだったが、令和5年度には約170台に増加。市が管轄するものも約350台あり、民間を含めると、さらに多くのカメラが設置されている。
勝田容疑者が関与を認めている女児刺殺事件が平成19年に発生した同県加古川市では、当時市がカメラを設置していた記録はないが、現在は市管轄のカメラだけで約1500台に上る。人工知能(AI)を搭載し、異常を感知すると警告灯が回るなどの機能が付いたカメラの設置にも力を入れている。
「事件を受け、子供の安全を守る意識が上がった」と市の担当者。両市ともに、県の補助事業の活用で費用面がクリアできたことなども増加につながったという。
防犯対策などに詳しい関西国際大の中山誠教授(犯罪心理学)は「以前はプライバシーへの懸念からカメラの設置に抵抗感を持つ人も少なくなかったが、それよりも犯人逮捕や犯罪抑止を優先する人が増えてきた」と指摘する。
画像が鮮明となり、データの保管や活用の面でも改良が重ねられたことで、防犯カメラの捜査への活用は進む。近年は、逃走方向にあるカメラ画像を次々とたどり、犯人を特定する「リレー方式」が定着した。
一方、都市部に比べ、地方ではカメラの整備が遅れがちだという。中山氏は、「闇バイト」による強盗事件で地方の高齢者宅がターゲットになっていることを踏まえ、「費用面の負担を考え、国や自治体が責任を持って整備していくべきだ」と話している。(安田麻姫)