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選挙最中の永田町襲撃 半年前から周到準備か 動機やガソリン入手経路に謎も

産経ニュース 2024年11月17日 10時0分

衆院選真っただ中の早朝、東京・永田町の自民党本部と首相官邸が火炎瓶などで襲撃された事件から約1カ月。警視庁は公務執行妨害容疑で臼田敦伸容疑者(49)を現行犯逮捕し、今月8日、殺人未遂容疑などで再逮捕した。これまでの捜査で、容疑者の現場での行動や犯行に使われた火炎瓶の構造、今春から準備を始めていたとみられることなどが判明。一方で、動機や大量に持っていたガソリンの入手経路など謎も残っており、警視庁公安部は解明を進めている。

早朝の異変

「ワーニング(警告)」「危険です」

10月19日午前5時45分ごろ、警告音を流しながら、煙を上げる白の軽ワンボックス車が、自民党本部前に現れた。

片側3車線の2車線目辺りで車から降りた臼田容疑者は、高圧洗浄機のようなもので液体をまき、クマ用のスプレーを噴射。さらに火炎瓶5本を周囲に投げつけ、うち4本が発火、炎上した。

現場は国会や首相官邸など重要施設が林立する永田町の一角。早朝とはいえ、多数の警察官が警戒していた。異変に気付いた警察官が車を追跡したほか、自民党本部前にも警察官がいたが、臼田容疑者はそこに向かって「攻撃」を繰り返した。

十分な殺傷能力

捜査関係者によると、使われた瓶はワインなどを入れるガラス製のもので、容量は約450ミリリットル。中にはガソリンが詰められ、瓶の口からガソリンをしみこませるように布が入っていた。

外側には、棒状の着火剤が2本、巻き付けたテープで接着されていたという。点火し、投げつければ瓶が割れて中のガソリンが飛び散り、火が拡散する仕組みだ。

火炎瓶はデモ隊などが治安部隊を牽制(けんせい)する際などに使われるが、昭和46年の「渋谷暴動」のように、意図的に警察官に投げつけて殺害した事件もある。臼田容疑者の火炎瓶は「結構しっかり作られたもの」(捜査関係者)で、公安部は十分な殺傷能力があったとみている。

大量のガソリン

臼田容疑者は自民党本部を離れた後、続いて車で首相官邸に現れ、そのまま車両防護柵に突入。車から降り、発煙筒などを投げつけた上、車内で何かを燃やそうとした。警察官が拳銃を構えて制止すると、抵抗することなく投降したという。

現場に残された車内からは、21個ものポリタンクが見つかった。1個は空だったが、16個にガソリン、3個にエタノール、1個に、不凍液などに含まれるエチレングリコールが入っていた。車を炎上させようとした疑いもある。

大量に用意されたガソリンを入手した方法は、まだ特定されていない。ガソリンは消防法で規制され、ポリタンクでの保管はできず、専用の携行缶が必要だ。

公安部が臼田容疑者の自宅を捜索したところ、空のガラス瓶やポリタンクが見つかったが、携行缶はなかった。捜査関係者によると、今年の春ごろからガラス瓶などの購入を始めており、少なくとも半年間にわたって準備を進めていたとみられる。

犯行動機も不明のままだ。臼田容疑者は原発再稼働に反対する抗議活動に加わっていたことや、交流サイト(SNS)で選挙の供託金廃止を訴えていたことはあるが、事件と関連があるかは不透明。逮捕後、一貫して黙秘を続けているといい、警察幹部は「どういう意図だったのか不明な点は多いが、客観的な証拠を積み上げて違法行為を立証していく」と話している。(橋本昌宗)

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