「母は本当に元気そのものだった。検査を受けたばかりに壮絶な痛みの末に亡くなり、母に申し訳ない」。順天堂大医学部付属順天堂医院(東京)で令和3年、胆管の内視鏡検査を受けた女性=当時(72)=が2日後に急死した事案。女性の娘(50)はこう言って唇をかむ。
娘は母親の診察にも立ち会ったが、著名な教授の検査ということで、何の心配もしていなかったという。「胃カメラのような検査と説明され、危険性のある検査とは知らなかった」
だが、検査終了から10時間が過ぎたころ、母親は腹痛を訴え始めたという。「痛くてどうにもならない。先生を呼んでほしい」。鎮痛剤もなかなか投与されず、母親は数分おきに夫である父親に電話して助けを求めていたという。
母親は検査の2日後に息を引き取った。当時は新型コロナウイルス禍。容体が急変した後も、娘といえども、すぐには会わせてもらえなかった。
また、妻を亡くしたショックから父親は医院に足を踏み入れることができなかったが、死亡後初めて説明を受ける際、医院側は院外での面談を拒否したり、書面での回答を提案したりしたという。誠実な対応とは思えず、娘は「痛めつけられた上に切り捨てられた思いだった」と振り返る。
検査後、何度も救えた段階があったのではないか-。娘は今もやり切れない思いを抱えている。「ミスは絶対に起きえないとはいえない。その後をどう対応するかが大事だと思う。特定機能病院として適切な対応をしてくれたのか」(前島沙紀)