少数の株式を保有して株主総会に参加し企業に圧力をかけ、不当に金品を要求する「総会屋」。経済界で絶大な影響力を振るった西武グループの中核企業「西武鉄道」もその毒牙にかかり、屋台骨を揺るがされた。
平成16年3月、警視庁組織犯罪対策3課は、西武鉄道の経営陣が総会屋に利益供与したとして、専務ら6人と総会屋3人を商法違反(利益供与)の疑いで逮捕した。
西武鉄道は13年に株主総会が円滑に進む協力をしてもらう見返りに、神奈川県鎌倉市と横須賀市に保有していた計6300平方メートルの宅地について、総会屋に格安の計約1億1200万円で売却。総会屋は約2億円で転売し、約8800万円の利ざやを得ていた。
主犯格の男=当時(74)=は、松坂屋やキリンビールの商法違反事件で摘発された過去もあり、関係者の間では「食らいついたら離さない人物」として知られた大物総会屋だった。
ピークの昭和末期には千人以上いた総会屋は、令和5年末、全国で150人程度にまで減少。平成9年に商法が改正され、利益供与の要求行為について処罰規定が新設。12年には子会社からの供与も禁止された。
事件は総会屋排除の機運を後押しすると同時に、企業がコンプライアンス(法令順守)を重視する意識が高まるきっかけにもなった。(外崎晃彦)