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しぶとい「ヤミ金」業態変え商行為偽装 心中事件で厳罰化、相談・摘発減少も水面下で蠢く

産経ニュース 2024年11月9日 11時13分

かつて厳しい取り立てで悪評が高かったヤミ金融業者を巡り、相談や摘発が減少している。平成15年に大阪府八尾市の主婦ら3人が取り立てを苦に心中したのを機に、法改正で規制が強化された影響とみられる。ただ、全国で多重債務に苦しむ人はまだ多く、規制の網をかいくぐる形で違法な高金利を得る業者は後を絶たない。時代とともに形態も変わるが、大阪府警幹部は「ヤミ金が犯罪組織の資金源にもなる」と警戒する。

大阪市内を拠点に、スマートフォンの買い取りを装い、法定利息の最大110倍で金を貸し付ける貸金業を無登録で営業したとして、府警は6日、貸金業法違反などの疑いで、46歳と32歳の男2人を逮捕した。男らはインターネットでスマホなどの不要品買い取りを装い、現金を振り込む「先払い買い取り」の手法でヤミ金業を営んでいたという。

運営していた中古品買い取りサイト「まるかい」を通じ、利用者に査定名目でスマホやゲーム機の画像を送信させ、買い取り代金として現金を入金。その後、「商品が届かない」との名目で、入金額に高額な「違約金」を上乗せして支払うよう利用者に求める形で、法定の約21~110倍もの高金利で金を貸していた。違約金の部分が事実上の金利になっていたというわけだ。

心中事件で厳罰化

府警によると、ヤミ金業者を巡る府民らからの相談は、八尾の心中事件が起きた平成15年には約4400件あった。しかし18年に成立した貸金業規制の改正法などで無登録営業の刑事罰が最高懲役5年から同10年に厳罰化され、超高金利の貸し付けに罰則も新設。以降は相談も減少傾向が続き、昨年は75件しかなかった。業者の摘発数も減少しており、平成20年には年間80件だったが、昨年は5件のみだった。

一方、多重債務に関する相談は、全国の消費者センターに年間2万件以上寄せられている。国のまとめによると、平成26年度には3万件超の相談があったが、令和3年度は2万392件まで減少。4年度からは増加に転じ、昨年度は2万3601件だった。こうした多重債務に苦しむ人の中にはヤミ金に手を出すケースも多い。

犯罪組織の資金源

近年は貸借関係を通常の商行為と装う手口も多く、「時代に合わせた形で超高金利の違法な営業が続けられている」(府警幹部)という。具体的には、今回の「先払い買い取り」のほか、支給前の給与を債権として買い取り、先に現金を渡す「給与ファクタリング」などが確認されている。

「ヤミ金は、返済に行き詰まれば口座の売買や闇バイトのような犯罪に従事させられる可能性がある」。府警幹部はこう警鐘を鳴らし、「収益が犯罪組織の資金源になる恐れもあり、悪質な事件は徹底して真相解明を図る」と強調した。(木下倫太朗、木津悠介)

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