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能登伝統の塩作り守る 海岸隆起や従業員避難で打撃、事業継続へクラファン

産経ニュース 2024年7月13日 11時7分

元日に最大震度7の激震が襲った能登半島では、500年以上受け継がれてきた「揚げ浜式製塩」も大きな被害を受けた。石川県珠洲(すず)市の「奥能登塩田村」では、従業員が避難生活を余儀なくされる中、海岸の隆起で思うように塩作りが進められない状況に陥ったが、伝統の継続に向けクラウドファンディング(CF)を実施。多くの支援や応援の声が寄せられている。

梅雨の晴れ間となった6月末、製塩の責任者「浜士(はまじ)」を務める浦清次郎さん(55)が海沿いの塩田に立った。おけでくんだ海水を勢いよくまくと、砂の上に均一に広がった。

重要無形文化財

能登の揚げ浜式塩作りは、塩田の砂にくみ上げた海水をまいて乾燥。集めた砂にさらに海水をかけ、塩分濃度の高い「かん水」がとれれば、釜で煮詰めて塩の結晶にする。国の重要無形民俗文化財に指定されているが、塩田村によると、現在も揚げ浜式で製塩している業者は5つほどしか残っていないという。

その業者の一つが、道の駅も運営する塩田村だったが、元日の地震により近くの斜面が崩れ、周辺道路は通行止めに。断水の復旧も見通せず、自宅が倒壊した従業員らは避難生活を余儀なくされた。道の駅も休業となったが、在籍する職人らからは「塩作りを再開したい」「自分の代で伝統を絶やしたくない」との声が上がった。

ただ、再開の道のりは険しかった。塩の選別などを担当するパート職員の女性は地震の関連で亡くなった。市外の避難先から戻れない従業員もおり、人手が足りなくなった上、塩作りに必要な海水を採水する海は、海岸の隆起で約70メートル沖に遠ざかってしまったという。

4月下旬、ようやく塩作りの再開にこぎつけたが、規模は縮小せざるを得なかった。塩田村の部長、神谷健司さん(64)は「高齢化などもあり、事業の継続は以前からの課題だったが、それが顕在化したのが今回の地震だった」と話す。

「負けないで」応援の声

苦境が続く中だが伝統を絶やさないため、塩田村は1千万円を目標に6月半ばから支援を呼び掛けるCFを始めた。7月12日時点で、集まった支援金は686人から約819万円。「負けないで踏ん張ってください」「古来からの製法が未来につながりますように」といった応援の声も多く寄せられた。

集まった支援金は、従業員の仮設住宅建設や機器の購入、施設の補修などに充てる予定だ。神谷さんは「長い歴史の中でピンチはいくつもあったと思うが、その時代の浜士たちが脈々と技と伝統を引き継いできた」とし、「職人が塩作りに集中できるようサポートしたい」と力を込めた。(前原彩希)

支援はCFサイト「キャンプファイヤー」https://camp-fire.jp/projects/view/748970で8月31日まで受け付けている。

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